菊池雅之のミリタリーレポート
空自輸送機部隊の大改編
パイロット教育の集約化


純白の機体が特徴のT-400。ビジネスジェットらしい洗練されたデザインがおしゃれ。同機体を配備するのは、今回改編される第41教育飛行隊のみ。

 2021年10月から11月にかけ、航空自衛隊の輸送機部隊を取り巻く環境が大きく変わっています。まさにそれは“大改編”とも言うべき状況です。

 その改編計画の一つに第41教育飛行隊が含まれています。今回は、輸送機や救難機のパイロットを育成することを任務としているこの部隊にクローズアップしましょう。

 教育に用いているのが練習機T-400です。ビジネスジェット機として市販されている機体です。現在この機体を製造しているのは、レイセオン社ですが、元をたどると、三菱重工が開発・製造していたMU-300でした。しかし、“売れなかった”…。そこで、ビーチクラフト社と提携し、米国販売に力を入れようとしましたが、それでも結果は芳しくなく、結局、販売権及び製造権を同社へと譲りました。

美保基地へと着陸する第41教育飛行隊のT-400。浜松基地へと部隊のお引越しを断行した。

 T-400が練習機として選ばれた理由は、空自が配備している輸送機や救難機のコックピット同様に、操縦士が横に並んで座るサイドバイサイドシートだったからです。操縦技術だけでなく、多座席型航空機の基礎的な運航形態「クルーコーディネーション」も学ぶことが出来ます。

 空自にてパイロットを目指すにあたり、まずは初等練習機T-7にて、約22週間の教育を受けます。ここまでは、戦闘機を目指す学生も輸送機・救難機を目指す学生も同じコースです。この後、それぞれの目指す機体によって道が枝分かれします。輸送機・救難機を目指す学生はT-400による操縦課程へと進みます。この教育を担当しているのが、美保基地(鳥取県)の第3輸送航空隊の第41教育飛行隊です。

美保基地に駐機するT-400。その後ろには、第3輸送航空隊の第403飛行隊のC-2。この2ショットももう見納めか…。

 同部隊により、約47週間みっちりと操縦を学び、ウイングマークを取得します。これにて、晴れてパイロットとなれるのです。

 ちなみに、米国留学という道もあります。T-400の代わりに、渡米し、米空軍のパイロット養成コースに入り、T-1にて操縦を学ぶのです。なお、このT-1、名称や型式こそ異なりますが、空自の配備するT-400とほぼ同じ機体です。ということは、前述の通り、T-400のルーツが日本にあることを考えると、米軍が日本製の機体を配備している、ともいえるのです。

 1994年2月、空自にT-400が配備されました。これを受け、1995年6月1日、臨時飛行隊を経て、第41教育飛行隊が新編されました。これ以降、2021年までの間、約500人のパイロットを送り出していきました。

10月15日に美保基地内の格納庫で行われた「第41教育飛行隊壮行会」の様子。

 そして、時は平成から令和となり、前述のように、空自輸送機部隊の大改編の一環として、第41教育飛行隊は、航空支援集団・第3輸送航空隊から航空教育集団・第1航空団へと親部隊を変えることになりました。これに伴い、美保基地から浜松基地へと拠点を移します。

 この改編の目的は、“教育部隊の集約”です。浜松基地には、航空教育集団の司令部が置かれ、将来戦闘機のパイロットとなるため、T-4による戦闘機操縦課程を実施しています。その教育に当たるのが、第1航空団飛行群の第31教育飛行隊並びに第32教育飛行隊です。この飛行群の中に、第41教育飛行隊が新たに組み込まれます。この他、浜松基地には、航空機やレーダー等の整備員を育てる第1術科学校があります。まさに浜松基地は空自における教育のメッカなのです。

 これにより、実戦部隊である第3輸送航空隊は負担を軽減され、より任務と訓練に専念できます。また、美保基地は日本海側に面しており、冬場は強風が吹き、降雪もします。そのため、飛行できない日もありました。ですが、浜松基地周辺の気候は温暖で、累計降雪量の平均値が0㎝と、ほぼ雪が積もらないので、フライト計画が立てやすい環境でもあります。

 これ以上ないほど、教育に適した場所と言えます。

 2021年10月15日、美保基地にて「第41教育飛行隊壮行会」が行われ、別れを惜しむとともに、さらなる発展を願い、送り出しました。その後、段階的に、機体や人員が浜松基地へと移動し、10月29日、「第1航空団改編記念式典」が行われました。これにて、浜松基地は、すべてのパイロットの故郷となりました。

今回の移転に伴い、垂直尾翼に描かれていた第41教育飛行隊の部隊マークもはがされた。今後は、黄色と黒のチェッカーフラッグを模したマークとなる。
  • 軍事フォトジャーナリスト.。1975年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。講談社フライデー編集部専属カメラマンを経て軍事フォトジャーナリストとなる。主として自衛隊をはじめとして各国軍を取材。また最近では危機管理をテーマに警察や海保、消防等の取材もこなす。夕刊フジ「最新国防ファイル」(産経新聞社)、EX大衆「自衛隊最前線レポート」(双葉社)等、新聞や雑誌に連載を持つなど数多くの記事を執筆。そのほか、「ビートたけしのTVタックル」「週刊安全保障」「国際政治ch」等、TV・ラジオ・ネット放送・イベントへの出演も行う。アニメ「東京マグニチュード8.0」「エヴァンゲリオン」等監修も行う。写真集「陸自男子」(コスミック出版)、著書「なぜ自衛隊だけが人を救えるのか」(潮書房光人新社)「試練と感動の遠洋航海」(かや書房) 「がんばれ女性自衛官」 (イカロス出版)、カレンダー「真・陸海空自衛隊」、他出版物も多数手がける。YouTubeにて「KIKU CHANNEL」を開設し、軍事情報を発信中
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