菊池雅之のミリタリーレポート
実に18年ぶり!!
新生空母「カール・ビンソン」横須賀寄港


18年ぶりに横須賀へと入港した「カール・ビンソン」。甲板上には艦載機がズラリと並ぶ。F/A-18E/Fスーパーホーネットが主流であるが、その中にF-35Cの姿も見える。

アメリカの軍事力の象徴!空母来日

 米海軍はトータル10隻の空母を保有しています。このすべてが「ニミッツ」級という同じ空母です。ネームシップである「ニミッツ」が建造されたのは1968年のお話。そして米海軍の戦力となるべく就役したのは1975年5月3日となります。世界初の原子力空母であり、世界最大級の軍艦となりました。

 米海軍横須賀基地は「ニミッツ」級の9番艦である「ロナルド・レーガン」が配備されています。世界中に展開する米軍ですが、空母を外国に配備しているのはここだけです。

16時ごろのゆっくりとした入港となった。土曜日と言うこともあり、多くの人々が、横須賀港が見渡せる場所へと集まった。

 2021年5月、「ロナルド・レーガン」は、中東方面へと展開するため、日本を後にしました。空母に限らず、日本を母港としている米海軍艦艇の担当地域は、アジアからインド洋、そして中東地域となります。この展開中に、アフガニスタンからの米軍撤退に乗じて、タリバンが首都カブールを制圧しました。この混乱を受け、「ロナルド・レーガン」空母打撃群と強襲揚陸艦「イオージマ」等は、アラビア海北部にて警戒監視活動を行っています。

 そこで、「ロナルド・レーガン」の代わりとして、2021年8月28日16時ごろ、「ニミッツ」級の3番艦として、1982年3月13日に就役した「カール・ビンソン」がやってきました。なかなか年季の入ったベテラン空母です。

 南シナ海における中国の動きを牽制するためには、空母の戦力は必要不可欠です。そう考えると、たった1隻とはいえ、空母が抜けた穴は大きく、この間隙をついて中国が行動を移すかもしれません。そこで、「カール・ビンソン」が派遣されました。

 これまでも「カール・ビンソン」が来日したことはあります。改めて振り返ってみると、今回の来日は18年ぶりとなります。

「カール・ビンソン」の随伴艦として、同じく横須賀基地へと入港した駆逐艦「ストックデール」。アーレイバーク級の56番艦で、同級の中でも、フライトⅡAという最新モデル。

生まれ変わった船体とF-35C

 実は「カール・ビンソン」はこれまでとは少し違う空母となりました。前述しましたように「ニミッツ」級のほとんどが30年以上を経たベテラン艦となってしまいました。そこで、今後、新しい空母として「ジェラルド・R・フォード」級が建造されていく計画です。すでに1番艦は完成しており、各種試験中です。ですが、すぐに総入れ替えできるわけではありません。

 そこで、「ニミッツ」級に大規模な改修を加え、今しばらく使えるようにしていきます。「カール・ビンソン」もその一つで、2018年に行われたドック入りにて、システムやレーダーなどを更新し、能力向上化改修を施しました。これに合わせ、艦載機として、新たにステルス戦闘機F-35Cを搭載しました。

 F-35Cは、F-35Aを空母運用型としたバージョンです。今後、米海軍の主力戦闘機となっていくでしょう。F-35Cが日本にやって来るのは今回が初めてのこととなりました。

 こうしたこともあり、久しぶりの「カール・ビンソン」入港は、ちょっとした話題となりました。

甲板に置かれたF-35C。現在1個飛行隊のみがF-35Cとなっている。その飛行隊が、VFA-147(第147戦闘攻撃飛行隊)「アルゴノーツ」。

 今、極東アジア地域は、東西冷戦期に匹敵するほど、緊迫しています。そんな状況にある今だからこそ、「カール・ビンソン」の存在は大いに期待されております。その声に応えるかのように、8月31日夕方、出港していきました。必要な補給だけを済ませただけのほんのちょっとの滞在でした。

 近々また日本へとやって来ることでしょう。

「カール・ビンソン」の入港を海自横須賀基地の吉倉桟橋に並ぶ護衛艦が見守る。

  • 軍事フォトジャーナリスト.。1975年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。講談社フライデー編集部専属カメラマンを経て軍事フォトジャーナリストとなる。主として自衛隊をはじめとして各国軍を取材。また最近では危機管理をテーマに警察や海保、消防等の取材もこなす。夕刊フジ「最新国防ファイル」(産経新聞社)、EX大衆「自衛隊最前線レポート」(双葉社)等、新聞や雑誌に連載を持つなど数多くの記事を執筆。そのほか、「ビートたけしのTVタックル」「週刊安全保障」「国際政治ch」等、TV・ラジオ・ネット放送・イベントへの出演も行う。アニメ「東京マグニチュード8.0」「エヴァンゲリオン」等監修も行う。写真集「陸自男子」(コスミック出版)、著書「なぜ自衛隊だけが人を救えるのか」(潮書房光人新社)「試練と感動の遠洋航海」(かや書房) 「がんばれ女性自衛官」 (イカロス出版)、カレンダー「真・陸海空自衛隊」、他出版物も多数手がける。YouTubeにて「KIKU CHANNEL」を開設し、軍事情報を発信中
  • https://twitter.com/kimatype75

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