#45 サンスペル
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英国製コットン製品の品質の良さはいうまでもなく、7つの海を支配したかの国の伝統だ。何しろ世界中の良質な綿花を世界中に広げた植民地の中からピックアップし、さらに世界中のどこよりも早くその原綿の加工を機械化した国だからである。織機や糸繰り機などの発明、良質なコットンを科学的に生産する方法を生み出す知恵と文明で世界に先んじることが出来た。したがって英国に良質のコットン製品を取り扱うブランドが多いのは伝統であり、当然のことなのである。だからこそ、本場英国の一流デパートの肌着売り場を担当するバイヤーたちの目は、コットン製品の質に関してはことのほか厳しい。そんな厳しいバイヤーたちの絶大な信頼を得ているのが『SUNSPEL』である。その証拠は「ハロッズ」や「セルフリッジ」、あるいは「リバティ」といった老舗の一流百貨店に行くと目にすることができる。いずれの百貨店にも『SUNSPEL』は独立したコーナーを構えているのだ。150年以上も続く、英国のアンダーウエア・メーカーについて、学んでいくことにしよう。
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定番としてのスタイルには欠かせない『SUNSPEL/サンスペル』のTシャツ。日本のファッション通の間では古くから知られており、その圧倒的な着心地の良さに惚れ込んだ愛用者も少なくない。長く着れば着るほどその良さが判るのが特徴。最高品質のコットンと、その上質な素材を丹念に手作業で作り上げた完成度の高さが人気の秘密である。ポール・スミスやマーガレット・ハウエル、トム・ブラウンなどのコレクションにもたびたび取り入れられ、その人気は不動となっている定番だ。人気の白以外にも、今年はカラー展開された製品が魅力的。シャツやジャケットなどとの組み合わせにも、大胆な色で楽しみたいもの。
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1860年に誕生したアンダーウエア・メーカーである『サンスペル』社は、創業当初からアンダーウエアを主力商品として生産し続けている。当時の英国はビクトリア朝時代。産業革命による経済成長がピークに達した時代であり、人々の生活も文化も成熟していた時代だった。特に良質なコットン製品は貴族階級を中心として大変な人気となり、肌触りの良さが品質の高さであることを、人々が身を持って実感した時代でもある。創業以来、同社が掲げていた営利原則は実用性、礼儀、気配り、敬意。英国企業らしく、誠実なモノ作りを心がけて堅実な事業を展開してきた。
同社を一躍有名にしたのは、1947に英国で初めて発売したボクサーショーツ。これはサンスペルの初代会長がアメリカでボクシングの試合を観戦していたとき、リング上のボクサーが着用していたショーツを見て、開発を閃いたのだという。帰国後、早速開発に着手し、当時評判の高かった“シャツ生地”を使った「ボクサーショーツ」なる下着を発売するようになる。3枚はぎのヒップデザインにより不快感のあるセンターシームをなくしたデザインで、これが当たった。現代でいうところの、いわゆる「ボクサーショーツ」の誕生である。
サンスペル社は創業当時から新しいスタイルや生地の開発、ニッティング技術の採用など、旧来の価値観に囚われない開発に取り組んできた歴史がある。戦後間もない1950年代には、冬場は保温高価を発揮し、夏場は肌触りが涼しいメッシュ素材を開発。また、近年ではエジプト超長綿の天竺素材であるQ82を開発した。この素材は独自のレシピで生み出され、その圧倒的な肌触りを実感できる生地はサンスペルだけの完全なオリジナルである。これは現行製品の定番素材でもある。
こうした新しい素材の開発を積極的に行う一方で、製品はクラシックなスタイルのものが多い。しかも製造ラインにおいては、いまだに手作業が中心の職人気質を守り続けており、頑固なまでに伝統的な製法にこだわっている。英国ブランドの魅力はまさにこれで、伝統と革新が無理なく融合したスタイルが流行に左右されない定番を生み出している。同社ももちろん、その例に漏れない。贅沢な肌触りと上品で優雅さを感じる佇まい、そして使い込むほどに味わいと愛着が増すサンスペルの製品。長く付き合える衣服とはこういうものを指すのであり、同社がその代表的な存在であることは疑う余地がない。一度、着用してみることをお勧めする。あなたはその日からサンスペルの虜になるはずである。
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チェリーレッド。
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エバーグリーン。
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オリエントブルー。
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ネオンピンクのTシャツ。
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ディープターコイズ。
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タンクトップ。ホワイト。
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タンクトップ。ブラック。
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その肌触りは圧倒的だ。
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ボクサーブリーフ。
初出:ワールドフォトプレス発行『モノ・マガジン』 2013年3-2号