
2025年10月に発売されたキリングッドエール。発売後、約3ヵ月でなんと累計突破本数5000万本(350mL缶換算)を突破。350ml缶1本あたり200円前後という価格帯ではダントツの売れ行きです。さらに、世界で屈指の歴史と権威のある国際的なビール・サイダー審査会で、今年3月に開催された「INTERNATIONAL BREWING AWARDS , SINCE 1886」にて、その味わいが高く評価され、「Smallpack Ale – Class 2(abv 4.5% – 4.9%)部門」で日本最高位となる銀賞を獲得。つまり、売れてる上に専門家による味の評価も高いってこと。そうなると取材したくなってくるのが酒飲み編集者の宿命。というワケで、グッドエールの製造に携わっている方々と、開発に関わった方々、それぞれの担当を代表して計4名のキリンビールの社員さんに話を伺ってきました。
【とりあえずビールの造り方を教えてもらった】
キリンビールの工場は、全国に9ヵ所(北海道千歳工場、仙台工場、取手工場、横浜工場、名古屋工場、滋賀工場、神戸工場、岡山工場、福岡工場)。中でもグッドエールを製造しているのは、仙台工場、取手工場、滋賀工場、岡山工場の4ヵ所。なんで、まずは弊社からいちばん行きやすいキリンビール取手工場へと向かいました。
ところで、酒飲みなのはいいんですがホントに飲むの専門で、ビールの造り方に関してこれっぽっちも知らないことを取手に着いてから思い出しました。大丈夫なんでしょうか。でも、ビール工場に来たってことは、ここには専門家が大勢いるワケですから、教えてもらえばいいんです。そこで、まずは醸造エネルギー担当 稲森倫太郎さんに原料がビールになるまでの工程を教えてもらいました。

「ビール醸造は、仕込工程、発酵工程、濾過工程の3つの工程によって成り立っています。ビールの原料となるのは、麦芽とホップと水です。


ビールの原料となる麦芽とホップ。
仕込工程で最初に行われるのは糖化工程です。麦芽に熱とお湯を加え、ドロドロのお粥状のもろみにします。もろみの状態にしたものは麦汁ろ過という工程を経て、麦汁という綺麗なエキス状のものに変わります。
次が麦汁煮沸という工程です。麦汁を煮沸しここでホップを加え、適度な苦味をつけながら、麦汁の嫌な成分や香りを飛ばし、さらにクリアな麦汁を得ることが、麦汁煮沸の目的です。これが通常のビール醸造の仕込工程になります」


ここで最初のポイントなんですが、グッドエールでは通常と違った製法を採用しているそうです。その名も “ブライトアロマ製法”。
「ブライトアロマ製法では、麦汁煮沸の途中にホップを入れるのではなく、そのあと冷却して麦汁が冷たくなったところでホップを投入します。これにより、苦味・雑味を抑えつつ、より豊かでフルーティな味・香りを引き出すことができるんです」
そして次の発酵工程へ。
「冷やされた麦汁は、発酵タンクへと向かうんですが、途中に酵母を投入します。麦汁の糖分を酵母が食べることで発酵が起き、アルコールと炭酸ガス(二酸化炭素)が生成されます。
この発酵から得られたビールを若ビール(わかびーる)といいます。しかし、濁り成分が残っており、飲むのに適さない状態です。
そこで最後の濾過工程が必要になります。この工程を経ることで、皆様のお手元に届くような綺麗でクリアな黄金色のビールが完成するんです」
稲森さんありがとうございました。ビール醸造について、少し理解することができました。やっとここでスタートラインに立った感じです。
【なんと香しい! クライオホップの実力を実感!!】
次なるお方は、稲森さんと同じく醸造エネルギー担当 久保田史織さん。普段は工場全体に送るユーティリティなどの管理に加え、出荷直前の液種全体の香味チェックもされてるそうです。

まず、キリンビール取手工場の特色を教えてもらいました。
「取手工場はキリンビール全9工場の中で最も製造量の多い工場です。一番搾りや晴れ風、氷結シリーズなど、主力製品を含めると、年間での製造量は500ml缶に換算して、約6億本相当となり、首都圏への安定供給に貢献しています」
6億本って、とんでもない量だと思うんですが、それを消費しちゃってる我々がいるワケで、そう思うと “安定供給” という言葉のありがたみを改めて感じます。

ところで、キリンビールといえばキリン一番搾りをはじめとする “ラガー” の印象が強いんですが、グッドエールはその名前にもある通り “エール” です。ラガーとエール、このふたつの違いってご存知ですか? 先述の通り、そんなことも知らずに取手まで来ちゃったもんですから、久保田さんにさらっと解説してもらいました。
「まず製法の違いですけれども、ラガータイプのビールは下面発酵酵母(発酵タンクの下部に沈んで発酵する酵母)を用いて比較的低温で発酵させます。
それに対し、エールタイプのビールは上面発酵酵母(発酵タンクの上部にふわふわと浮遊しながら発酵する酵母)を用いて比較的高温で発酵させることが特徴です。
この製法の違いで香味特徴が変わってきます。ラガーはすっきりとしたクリアな飲み口と爽快な喉ごしを、エールは芳醇で果実のようなフルーティな味わいを実現します」
ラガーとエールの違いがわかったところで、先述のブライトアロマ製法に続きふたつ目のポイント。グッドエールに使用している「クライオホップ(Cryo Hop®︎)」についてです。通常、使用しているホップは苞(ほう)全体をペレット化してビールの原料としてます。このホップの苞を縦に割くと中心に黄色い粒々が見えます。この粒はルプリンといって、フルーティさが際立つ味わいを実現させる香り成分です。このルプリンを凝縮させてペレット化したのが、クライオホップです。ホップの品種名ではなく、世界有数のホップサプライヤーである、ヤキマ・チーフ社によって極低温環境下で窒素置換し、ルプリンの酸化劣化を防ぎながら加工されたホップ商品なんです。
*CRYO=「凍結・低温」の意味


ただし、通常のホップと比べると、少し扱いづらい部分があるんだとか。
「クライオホップは一般的なホップに比べて、簡単に手でつぶせてしまうぐらい、粘度が高くて柔らかいです。そのため、配管へのこびりつきなどのリスクがあります。安定供給を実現するため、現在設備投資を行っていますが、それまでの間は直接手作業でクライオホップを投入しています」
通常はホップ専用の貯蔵タンクからパイプを通して必要量を麦汁に加えるんだけれど、その機械操作が取手工場では現状できずにいる(他の3工場では、すでに設備を整えている工場もあるそうです)ということで、久保田さんが実際に通常のホップとクライオホップをシャーレに入れ、それぞれ指先で押し潰す実演をしてくれました。通常のホップは潰れないんですが、クライオホップは簡単に潰せます。


このとき、確かに非常に柔らかいことは確認できたんですが、それ以上にクライオホップの実力を実感することになってしまったんです。それはどういうことかといいますと、この取材を行なっていたのが結構広い部屋だったんですが、時間が経つうちにシャーレに入れられていたクライオホップの柑橘類を思わせるフルーティで華やかな、それでいてしっかりビール感のある香りが部屋いっぱいに広がってたんです。シャーレひと皿分だけだったんですけどね、いや、驚きました。
久保田さんのターンの締めくくりは「出荷判定試飲」の実演です。
「私たちは毎日、お客様のお手元に届ける前に、出荷判定試飲という最終チェックを行っています。これは日々ロットごとに味に問題がないかというのを、実際に人が口に含んで飲んで、喉越しなども含めてチェックすることをいいます。原料の品質ごとのばらつきを考慮しながら、発酵工程など工程の条件を微調整し、おいしいビール造りに日々努めています」

「グッドエールらしい華やかでフルーティな香気がトップから感じられ、終始スムーズに流れていく味わいが実現できています。自信を持ってお客様にお届けできる味わいとなっています」
久保田さん、ありがとうございました。取手工場での取材はこれにて終了!

【ビールの味の決め方、造り方】
キリンビール横浜工場は京急生麦駅からすぐのところにあります。最寄り駅が生麦なんて、いかにもビール工場らしいじゃありませんか。でもって、なぜにして横浜工場に伺わなくてはならなかったのか。それは、ここには商品開発研究所が併設されてるからなんです。当然、グッドエールもここで開発されました。取材当日は中味(なかみ)開発担当者に加え、ブランド担当者にも同席してもらい、グッドエールが完成するまでと今後どのように展開していくのかについて話を伺いました。


取手工場のタンクと横浜の商品開発研究所のタンク。量産のためではなく、あくまでも開発のためなので、横浜のタンクはかなり小さいのがわかります。
まずは、キリンビールの新商品の特に中味開発を主に担当されているマーケティング部 商品開発研究所 中味開発グループ 石毛太陽さんに話を伺いました。ビールという商品の味がどのように決められていくのか、実に興味深いところであります。

「ブランド開発担当から受け取った味のイメージからビールの中味、味や香りの骨格を決めていき、レシピを開発していきます。グッドエールのスタートは “日本の未来を明るくしたい”、“お客様を明るくしたい” という思いです。ですから、飲んだ時にパッと明るくなるような、そんな味わいにしたいと思い、今回はエールというビアスタイルを選択したんです」
日本の未来を明るくするビールの中味担当者のお名前が、太陽さんというのはちょっといい感じですね。で、最初にグッドエールの味のゴールが想定されたとき、石毛さんはどう思ったんでしょう?
「いちばん苦労したのは味の方向性を決めるところでした。お客様を明るくしたい、パッと明るくしたいという思いはあったんですけど、そこでエールを選択するというのもどうなんだろうかと。日本の主流のビールではないエールがお客様にどう受け取られるか、受け入れられるのかが、当初、不安で考えることが難しかったです」
ちなみに開発当時の日本でのエールタイプビール市場は4%程度* ということですから、エールを選択するということ自体、なかなかの冒険だったといえるでしょう。恐れ入ります。
*キリンビール調べ(期間:2024年1〜12月)
“日本の未来を明るくする” 味わい、これについて決め手となったのは、やはりクライオホップの使用と、ブライトアロマ製法の採用だといいます。
「特に雑味や渋みを低減し、香り高く、フルーティな味わいを感じることができます」

“ビールが苦手でも飲みやすい” という支持も、この味わいによるところ大でしょう。この味が完成したときの石毛さんの率直な感想はというと。
「グッドエールの味が最初に決まったとき、自分自身もとてもおいしいと感じましたし、この味、香りであれば、お客様をパッと明るくすることができると感じました。ただ、まだ発売前だったので、受け入れられるかどうかというところは、正直まだ不安でした。
しかし、繰り返し繰り返し何回も試験試作を重ね、ようやく多くの皆様の元にグッドエールが届き、ご愛飲いただけているということを嬉しく思っています。皆様、ありがとうございます」
グッドエールはエールビールを日本の新たな定番にすることに成功したとビール、といえるんじゃないでしょうか。
【日本の未来を明るくするビールって!?】
最後にご登場いただいたのがキリンビール マーケティング部 新価値創造担当 細川日菜子さん。グッドエールのブランド担当をされてます。
「ブランド担当というのは、モノづくりだけではなく、コンセプトの立案、育成といった、いわばブランドの旗振り役。具体的には、それを体現するパッケージであったり、CM 、そしてデジタルPRといったようなコミュニケーションの設計に加え、お客様からは見えないんですけれども、営業が使う商談資料の作成といった幅広い仕事を担っています」

細川さんにはグッドエールの商品としての組み立てについてを教えてもらいました。
「グッドエールは “日本を明るくしたい”、そんな思いから生まれたブランドです。ずいぶん大きなテーマに聞こえるという方もいらっしゃると思います(笑)。考えの起点としては、そもそもビールって陽気なみんなの笑顔が似合う、そんな飲み物だよねというところです。このビールが持つ力を未来の日本まで、バトンとしてつないでいきたいということなんです。
ニーズに関しては、“日常のちょっとしたご褒美” というところを反映しています。この “ご褒美” 自体の文脈が、昨今、大きく変化しています。少し前までは、例えばお給料日あとですとか、ボーナスといった大きなイベントのあとに大きく楽しんでいました。それが働き方改革もあって、自分のプライベートの時間を優先したいという方が多くなり、今ではちょっとしたご褒美を楽しみたい、というニーズが高まっています。このようなニーズを反映し、日々の暮らしを少しでも豊かにしてほしい、少しでも特別な時間を過ごしてほしい、こんな思いで、グッドエールという商品を発売しました」
これまでのビールでありそうでなかったパッケージカラーのオレンジ。どのように決まったんでしょう。
「もともとは白だったり、黄色、青、緑など、ありとあらゆる色を検討しました。その中でもやっぱりオレンジだよねとなった理由は、大きくふたつあります。
ひとつ目は、先ほど申し上げた通り、日本の未来を明るくするビールというところです。やはり店頭にこのオレンジがあることで、パッとお店を照らす。そして、買われるお客様の気持ちも明るくなる。そこにぴったりマッチするのがオレンジ色でした。
ふたつ目は、グッドエール特有のフルーティな味わいを、お客様に伝達しやすい。そんな色合いも込めています」

3ヵ月で5000万本を売り上げたという反響については、どのように感じてるんでしょう。
「想定以上の反響をいただいて、素直にすごく嬉しいです。3ヵ月で5000万本というとわかりにくいかもしれませんが、1秒に6本売れているという換算です。そう考えると、大変多くのお客様に手に取っていただいているんだな、と考えております。
さらに、普段高頻度でビールを飲まれる方、一方であまりビールを飲まれない方、両方から嬉しい声をいただいているという点が、我々ブランド担当者からすると非常に嬉しい点です」
では、最後にまだグッドエールを手に取ったことのない方たちにひと言。
「グッドエールは、“日本の未来を明るくしたい” と思いから生まれたビールです。長年ビールを造り続けてきたキリンビールだからこそできる本格的な味わいと、グッドエール特有のフルーティさを両立した、今までなかったビールになっています。
また、おいしさだけではなく、人と人とのつながりをつくり、地域コミュニティを元気にする活動を支援しています。この活動を通して、日本を明るく元気にしたいというふうに考えていますので、皆様ぜひ一本ご賞味いただけると幸いです」
細川さんがいう「地域コミュニティを元気にする活動」とは、ブランドアクションとして発売の2025年10月からスタートしている「グッドエールJAPAN」のこと。これは「日本全国の自治体と協力し、未来に向けて日本各地の地域コミュニティを元気にする」活動で、グッドエールの購入で、350ml缶1本で0.5円、500ml缶1本で0.8円の寄付になり、購入しなくてもサイトアクセスで得られるエールコイン(1枚0.5円)を自治体を選んで寄付することもできます。
これって、ビールのエール(ale)と応援のエール(yell)をかけてるんですね。そう考えると、“グッドエール” ってなかなかいいネーミングじゃないですか。
そんなこんなで、“日本の未来を明るくしたい” と思う方、グッドエールをお手に取ってみてはいかがでしょう。ぐびっといけば、パッと明るくなれるんじゃないでしょうか。
動画もお楽しみください。

































