え、もう31年目⁉ ミドリ定番のコンパクト文具「XS」がカラーチェンジ! せっかくなので製品の歩みとこれからを聞いてみた!


この写真を見て「何これ、カッコイイ!」と感じるか「あったあった、懐かしい~」と感じるかで、はい、昭和生まれかZ世代かがバレてしまいます。熱心なファンをもつコンパクト文具「XS」を丸裸にすべく、「ミドリ」ブランドを展開するデザインフィル に取材しました。

写真/青木健格(WPP) 文/前田賢紀(モノ・マガジンWEB編集長)

【1993年生まれのコンパクト文具】

モノ・マガジンWEB(以下、モノWEB)「世界最小クラスの文具シリーズ『XS』の出発点となる『カラーステーショナリー(CL)』が生まれたのは1993年でした」

デザインフィル広報(以下、広報) 「XSシリーズの前身は、1993年に発売されたCL(カラーステーショナリー)シリーズです。当時は各社から様々なデザイン文具が販売されていましたが、CLシリーズは、他社のデザイン文具と差別化して、装飾的な意匠を極力排除し、色透明樹脂にシンプルなロゴを印刷したデザインに統一しました。そして、コンパクトで機能的な文房具として年齢性別に関係なく幅広いユーザーに向けた製品を目指しました」

1993年発売のカラーステーショナリー。「覚えてるよ!」「使ってた!」という人も多数ではないでしょうか。

モノWEB 「1993年というとバブル崩壊の直後。まだまだ世の中はその余韻に浸っていた頃と言っていいでしょう。ではこのカラーステーショナリーがいかなる需要を掘り起こしたのかというと?」

広報「特に、サイズをできるだけ小さくし、軽量化したコンパクトホッチキスやミニハサミは爆発的に売れました。なお、1998年にApple社がiMacを発売したこともあり、色透明のカラーリングはこの後にさらに注目されるようになりました」

モノWEB「そうそうiMac! ボンダイブルーとかトランスルーセントなんて称していました。カラーとデザインによってPCという事務機器をデザインアイテムに格上げした立役者ですよね。では製品化にあたっての基本的なコンセプトを伺いましょう」

広報「CLシリーズは発売当初から、シンプルかつこだわりの特色で統一された文具であることと、小型・軽量化というふたつのコンセプトも持っていました。このふたつのコンセプトがあることにより、シリーズ全体のイメージに曖昧さがでて、他社との差別化も希薄に感じられるようになってきました」

2011年より 発売したCLシリーズ。カラーと小型・軽量のふたつのコンセプトで開発されていた頃の製品。

広報「そこで長年親しまれてきたCLという名前を捨て、開発コンセプトを携帯性に絞り、XS(エックスエス=エクストラ・スモール)という名前に変更して2016年10月に全面的なリニューアルを行いました。アイテムは、新たなコンセプトに合わせて世界最小クラスのサイズを追求したアイテム6点(コンパクトホッチキス、修正テープ、テープのり、カッター、メジャー、コンパクトハサミ)に絞り発売しました」

開発コンセプトを小型・軽量に絞り、世界最小クラスのサイズを実現した「XS」シリーズ。2016年発売。

広報「翌2017年にはその6点をセットにしたステーショナリーキットを発売し、その後、テープカッターとコンパクトパンチもラインアップに加えています。また、リニューアルに際してパッケージも環境面を配慮してプラスチック量を減らして紙を増やし、デザインフィルの商品開発テーマである「デザインと紙」という方向性にイメージを近づけました」

モノWEB 「31年というロングセラーの歩みにも迷いといいましょうか、時代に合わせた再検討のタイミングがあったということですね。そして2016年の『XS』の最新版がこの10月26日に登場しました」

10月26日に発売が開始された現行「XS」シリーズ

広報「XSの発売当初(2016)のカラーは白・黒・ピンク・青の4色で、このカラーは基本的にCLと同じカラーを踏襲しました。しかし、時代の流れと共に、 ミドリ自体のイメージが大人のステーショナリーメーカーとして変化し、ユーザーの幅も広がり、中心購買層がCL時代の小学生・中学生から、高校生・大学生・社会人が中心になってきました。そこでピンク・青をえんじ・紺に変え、ロゴの色も金色に統一することにより、 かつノンエイジ・ユニセックスのイメージを強化しました」

現行XSシリーズ。上からXS コンパクトホッチキス(704円)、XS カッター(462円)、XS コンパクトハサミ(748円)。
現行XSシリーズ。上からXS テープのり(396円)、修正テープ(374円)、XS メジャー〈1.5m〉(748円)。

【ポストコロナ時代の文房具とは】

モノWEB「ところで(これはちょっと伺いづらいのですが……)スマホを文具のように用い“筆記具不要”との極論もある現代におけるXSシリーズの価値やポジションとは?」

広報「コロナの影響により、働く場所や学ぶ場所はオフィスや学校だけでなく、自宅・貸しオフィス・カフェなど様々な場所に変化してきました。仕事道具の中心は言うまでもなくパソコンです。しかし、紙を使った仕事もあり、どんな場所でも作業ができる携帯性の高い文房具の需要は伸びてきていると感じています」

修正テープ使用シーン。手のひらにすっぽりどころか指先でつまむような文房具。とにかく「スモール」にこだわっているのです。仕事カバンの常備薬(役?)ですね。

モノWEB「ガンコにも毎月2回(2日、16日)発行している我が『モノ・マガジン』ですが、やはり同様に、今だからこその新たな価値が紙の本にはあると感じています。手触り、手応えがもたらす意味や感動は代えがたいものです。XSはコンパクネスにこだわった小さな文具ですが、実は骨太な思想に支えられていたのですね。では最後に、31年たった現在でもミドリ がXSシリーズを発売し続ける動機をうかがいましょう」

広報「スマホやタブレット、パソコンで書類を作り、ネットで送り、チェックしたり確認したりすること。メールやチャット、リモート会議で画像、動画を使ってコミュニケーションの幅が広がったことにより本当に便利になり、仕事のやり方も変化してきました。実際に手を使って書いたり、消したり、切ったり、貼ったり、測ったりする作業自体が少なくなった事は、抗えない時代の流れです。しかし、この作業自体は少なくなっても無くなることはありません」

広報「作業をするために必要な道具が使いやすく、使っていて楽しく、所有することの喜びをもたらすことがモノづくりの使命だと思っています。素材や製造・加工技術も時代とともに進化します。その進化をタイムリーに捉えてXS自体も進化させて、世界のより多くの人に使ってもらえる文房具を目指しています」

【「XS ステーショナリーキット」を大人買い!】

31年目のXSシリーズは文具8種類の展開で、この中から、「XS 修正テープ」「XS テープのり」「XS コンパクトホッチキス」「XS カッター」「XS メジャー〈1.5m〉」「XS コンパクトハサミ」をケースにセットした「XS ステーショナリーキット」(3850円)も登場。モノWEB読者の皆さんなら、こちらを大人買いが正解かも⁉

ステーショナリーキットの収納ポーチサイズは、高さ82ミリ、幅105ミリ、厚み36ミリと、当然ながらコンパクトです。
XSシリーズは全4色展開。黒、白、えんじ、紺。

小さく精密で機能性の高い道具って、これ日本のお家芸ですよね。ミドリのコンパクト文具シリーズ「XS」は、実用重視派にも、モノ愛好家にも響くだろうロングセラーの「小さな傑作品」なのです!

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ミドリ

  • モノ・マガジン&モノ・マガジンWEB編集長。 1970年生まれ。日本おもちゃ大賞審査員。バイク遍歴とかオーディオ遍歴とか書いてくと大変なことになるので割愛。昭和の団地好き。好きなバンドはイエローマジックオーケストラとグラスバレー。好きな映画は『1999年の夏休み』。WEB同様、モノ・マガジン編集部が日々更新しているFacebook記事も、シェア、いいね!をお願いします。@monomagazine1982 でみつけてね!

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