
空中給油機と言うジャンルがあるのをご存じでしょうか?
その名の通り、空中にて燃料を給油することができる航空機の事を指します。
飛び方、任務などにより違いはありますが、戦闘機などは基本的に1時間も飛行できません。燃料がなくなると、当然ながら墜落してしまうので、一旦基地へと戻って、補給しなければなりません。そのため、任務や訓練を中断するのは効率的とは言えません…。
そこで、上空で燃料を補給するために、空中給油機が誕生したのです。必要不可欠な装備として、多くの空軍で採用されていきました。

航空自衛隊の場合、空中給油機を保有すると、他国への侵略の足掛かりとなる、という批判もあり、長らく慎重な姿勢を取っていました。ですが、2001年に、ようやく空中給油機の配備を決定します。貨物区画もしっかりと活用することから、「輸送機」という言葉も付記され、空中給油・輸送機という機種となりました。旅客機としてお馴染みのボーイング767をベースとした機体であることからKC-767と呼びます。
2009年、第1輸送航空隊(小牧基地)に、第404飛行隊が新編され、KC-767が4機配備されました。
KC-767は大活躍を見せます。長距離移動を伴うような戦闘機の訓練や実任務をサポートし、さらには国際緊急援助活動として、フィリピンや西アフリカにて、救援物資を運ぶ輸送機としての活動も行いました。
すると、4機では足りないほど忙しくなりました。
さらに給油方法にも問題が出てきました。KC-767は、給油機側が燃料パイプを操作して戦闘機と接続するフライングブーム方式です。これは米空軍方式とも呼ばれており、F-15やF-35などを給油できます。ですが、給油を受ける(戦闘機)側がパイプを差し込むプローブ&ドローグ方式と呼ばれる米海軍・海兵隊方式には対応していません。
よって今後配備されるMV-22BオスプレイやF-35Bへと対応できないことが問題となりました。

そこで、追加で空中給油・輸送機を購入することが決まりました。それが、KC-46Aペガサスです。フライングブーム方式とプローブ&ドローグ方式の2つで給油作業が行えます。
KC-46は、ボーイング767をベースに開発した機体です。KC-767とルーツは同じですが、こちらは民間バージョンの767の良いとこ取りをした軍用特別仕様ともいえる機体となっています。2014年に初飛行に成功し、約180機もの生産が計画され、米空軍の主力空中給油機とする計画です。空自も6機購入することを決めました。
運用するのは、第3輸送航空隊(美保基地)の第405飛行隊です。2020年12月15日に新編されました。
初号機は、2021年10月29日早朝(日本時間)、シアトルにあるボーイングの工場がある飛行場を飛び立ち、14時10分ごろ、美保基地上空に姿を見せました。
白いカラーリングのKC-767とは一転、濃いグレーをしたカラーリングが特徴的です。
そのまま着陸はせず、基地上空を“南回り”“北回り”と、約30分かけて4周しました。これは、中国四国防衛局が、騒音測定を実施し、鳥取県や周辺3市へと報告するためです。
着陸すると、消防車が作る放水アーチをくぐり抜け、基地隊員らに出迎えられました。今後は、随時KC-46Aが同部隊へと引き渡されていきます。KC-767と合わせると日本の空中給油・輸送機は10機体制となります。
このほか、C-130Hに燃料給油機能を付加したKC-130Hという機体も3機存在しています。こちらは、主としてUH-60J救難ヘリコプターへと燃料の給油を行います。
戦闘機の頼もしい相棒となった、KC-46Aは、まもなく日本の空を駆け巡ることになります。

