
2025年6月8日に東富士演習場(静岡県)において開催された「令和7年度富士総合火力演習」は、これまでと違った内容となりました。それは大きな変化というものではありませんが、小さな変化がいくつも盛り込まれ、結果的に “生まれ変わった” と言っても過言ではないものでした。
コロナ禍の前までは8月に実施していましたが、5月開催へと変更され、今回初めて6月の開催となりました。そもそも8月開催をやめたのは、気候です。今の日本の夏は命の危機すらある猛暑であり、これを避ける必要があったためです。そして6月開催としたのは、訓練を実施する富士学校が、学生教育に支障のないタイミングを考慮したと思われます。
今回はとにかく新装備が集まる特別な回となりました。これについては、前編をご参照ください。
内容については、これまで通り島嶼防衛を想定したものではありましたが、前述のように小さな変化が多々ありました。

まず普通科部隊による塹壕戦が繰り広げられました。これは、ロシアによるウクライナ侵攻にて塹壕戦が重要となったことを受けてのことです。これまでの総火演でも、敵の補給路を断つために橋梁を爆破するなどの普通科部隊のゲリラ戦が展示されたことがありました。しかし今回はそれとはまったく異なり、目の前数メートルで敵と撃ち合う実に生々しい訓練となっていました。隊員の体に装着したカメラがとらえた映像がモニターに投影され、見ている人はさながらFPSゲームを見ているかのような演出もなされました。
さらに、引退した203㎜自走りゅう弾砲の余った砲弾を使い、起爆装置を取り付けてIED(即席爆破装置)として使ったり、ガソリンに火をつけ火炎障害にて敵の行く手を阻んだりと、これまでなかった戦術が次々と取られていきました。
もちろん、従来通り、10式戦車や90式戦車、そして16式機動戦闘車による射撃も行われました。むしろ、今回の総火演では、戦車が非常に目立っていた印象すらあります。
これら戦車をはじめとして、装甲車や各種車両は、会場の右か左から進入し、展開するのがこれまでの総火演の流れです。しかし今回は観客席を抜ける進入路が作られ、ここから一部の車両が出入りをしました。まるで歌舞伎の “花道” のような演出です。


V-22オスプレイやUH-2と言った新しい陸自航空機も登場しました。そしていよいよ引退までのカウントダウンがはじまったAH-1Sは射撃も実施しました。現在の陸自の方針としては、AH-1S並びにAH-64Dと言った攻撃型のヘリ系統はすべて廃止し、無人化する予定です。こうして飛行する姿はいつまで見られるのでしょうか。


また、島嶼防衛強化を目指す陸自にとっては欠かせない水陸機動団や第1空挺団も参加しました。両エースがこうして訓練する姿を見せることは抑止力ともなります。
かつては、募集広報の一環として一般公開もしていた総火演ではありますが、その方針は見直され、学生教育を目的とした演習となりました。しかし、今回は募集対象者の見学は復活しており、最盛期とは比べ物にはなりませんが、一般人の姿も見かけました。
日本を取り巻く安全保障環境は非常に厳しく、総火演がこれまでのように広く国民に開放されることはしばらくないでしょう。自衛隊記念日に行われていた観閲式すらも、開催自体を中止することになりました。
いつかまたこうした自衛隊と国民が触れ合える場が復活する日が来ることを願いたいものです。
