【モノ・マガジンTV】靴の工場見学 第1回:シブヤ製靴を訪ねる 前編


こんにちは。

今回から「YouTube・モノマガジンTV 工場見学ツアー」をWEBで解説や裏話など、読んでも楽しい「レザーソムリエ西牧のじっくり動画解説と裏話」が始まりました。

今回は第一回目のYouTube動画「シブヤ製靴工場見学ツアー」を解説していきたいと思います。いきなりの大作で、前中後編の3回に分けてお送りします。

シブヤ製靴は東京北千住にある創業60年の歴史ある靴メーカーです。なんと2022年6月に引越しをしたばかり。

今靴業界で一番乗っている男、三代目社長、吉田大介さんに工場見学をアテンドしていただきました。吉田社長は自ら釣込み、底付けなど若いころから現場に入っていました。

 そして今は経営者と、全てのスペシャリストなのです。この日は結構、緊張していましたね。そして進行は西牧とモノマガジンの偉い人、鈴木さんで撮影スタート!!

 まずは企画室に潜入!! ここはサンプルのアッパー(本体)を職人さんが裁断(手断ち)して縫う作業(製甲)を行う場所です。この道50年の靴職人の荒木さん。荒木さんは製甲のプロフェッショナルです。靴は分業化されている会社が多く、各パートにプロフェッショナルがいます。

 今回はシブヤ製靴のオリジナルレザースニーカーブランド「TOSS」を制作してもらいながら、説明していただきます。

裁断する革を広げたところです。かなり大きいですが、牛革を背中からカットしたもので、これでも約半分です。今回はイタリア製のマストロット社の革を使用しました。すごく肌目も綺麗で、美しい白革でした。

次に裁断するための抜き型を用意しました。今回、裁断風景はないですが、クリッカーと呼ばれる油圧式の機械で抜いていきます。実はここにも裁断のプロがいて、傷や血筋を避けて裁断をする職人さんがいます。シブヤ製靴さんではサンプルなどは製甲のプロ荒木さんが裁断もしています(荒木さんは手断ち)。この金属の抜き型、各サイズごとにあるので、結構な量があるとの事です・・・靴はサイズがあるから大変ですね。

いよいよ製甲に入ります。実は製甲というと縫うだけの仕事に思われたりするのですが、革を漉き、折り返して…などの重要な部分も担います。特に革を薄くする技術は長年の経験がないとできない、スペシャリストな技です。

そして「馬」と呼ばれる道具を使い、踵部分を縫った所を開いて叩いていきます。これは踵の内側がガタガタだと、足が痛くなりますよね。その部分を平らにする作業です。ちなみに動画内では「なんで馬って言うのだろうね?」と言っていますが多分、馬の背中に似ているからだと思います。

次はインナー(靴の内側の革)と表の革を縫い合わせます。ここはミシンの技術がいる所です。簡単に縫っているように見えますが、いやいや、さすが歴戦王です。綺麗なステッチは言葉も出ませんでした。

次はサライという工程なのですが、イチキリと言われる道具を使い、余分な裏側(ライニング)をカットします。これはわざと裏側を残して縫い付け、後から切り取ります。この方が正確で綺麗な仕上がりになります。このサライ、実はめちゃ難しいです。深く刃が入ってしまうと、表まで切ってしまうので、全てが一瞬の泡に消えてしまいます。職人さんって、なんでも簡単そうに作業するんですよね……。

あっというまに、アッパーの完成です。裁断・製甲を今回は見ていきました。ただ切るだけではなく、傷などチェックする裁断、漉きや折込みなど職人技が光る製甲は圧巻でした。次はいよいよ底付けに突入です!! 60年の歴史に裏打ちされた真髄を次回は見ていきましょう。第二部の動画・WEBマガジンをお楽しみに!!

このWEBマガジンでは、工場見学ツアーなど動画配信したものをレザーソムリエ西牧が記事にしてお送りしています。裏話など動画では配信できない情報も提供していきたいと思います。ではまた読んでくださいね!!

西牧正晴(masaharu nishimaki)

1977年生まれのバリバリの氷河期世代。19歳から靴屋のバイトを初めて、そのまま靴、革にどっぷりハマる。靴メーカーやベルトメーカー、靴の組合など、とにかく革がある場所で革の知識だけでなく、売り方やマーケティングを学ぶ。レザークラフトの作家としても活動中。

現在はフリーランスで革、靴、バッグのライター・フォトグラファー、皮革アドバイザーなどをして、日々革について精進中。

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