攻めるレクサス
電動車補完計画


 今、クルマ好きにとって一番攻めている自動車メーカーはおそらくレクサスかもしれません。環境対応でEVの発表が多い中、レクサスは次々と楽しそうなクルマを発表しています。主力人気モデル、NXが昨年フルモデルチェンジしました。

好評なデザインはキープコンセプト。注目はその多様なパワートレーンで、2.4リッターターボ、2.5リッターのNA、ハイブリッド、プラグインハイブリッドと用意されています。特にプラグインハイブリッドはブランド初のモノです。その走りは4リッターのエンジンを搭載したクルマに匹敵するほどの加速をするといいます。唯一のネックはモーターやバッテリーなどで車重が2tを超えてしまうところでしょうか。

 そして今年の1月には最上級SUV、LX600が発売されました。

なんでぇ、ランクルを豪華にしただけぢゃねぇのかい、と思ってしまうかもしれませんが、それは違います。静粛性や乗り心地はランクルを超えていると言われます。詳しい話は専門誌に譲りますが、ラダーフレームの「悪路本気上等!!」なクルマとは思えない乗り心地といいます。また静粛性もランクルの上をいきます。フロントガラスやドアガラスは分厚いモノを採用するなど、見た目の豪華さだけを追求したクロカンモデルとは一線を画すのです。

 そして4月には100%電気自動車、RZがデビュー。

またまたぁ、レクサスのEVならUX300eがあったでしょうに。確かにその通りなのですが、そちらはなんとなく「居抜き」(撤退した店舗に同じ業種のお店が入る)っぽく見えなくもないじゃないですか。レクサスのエモーショナルな雰囲気は感じにくく、豪華傾向の電動SUVを出しました的な感じがしないでもありません。もちろんそんなことはないのでしょうけれど。そしてRZです。いやいや、リチウムイオン電池もbZ4Xと同じ71.4kWhだからトヨタ版の豪華バージョンなんじゃないの? と言われそうです。確かに専門誌的な解説ですとe-TNGAを使用しています。

e-TNGAはスバルと共同開発したSUV向けBEV用のプラットフォームです。それはモーターの位置やドライバーの位置などはだいたい固定されていますが、バッテリーの搭載容量などは変更できます。そのままですと確かにbZ4Xの豪華版で終わりそうですが、そこからがレクサスらしい味付けになります。

 bZ4XにはFWDもラインナップされますが、RZは4WDのみのラインナップに。フロントに搭載されるモーターはbZ4Xよりも100PS近く高出力な204PSのモーターを。プロトタイプに試乗した評論家の先生によると力で曲げずに自然な雰囲気の味付けといいます。運転感覚を大切にする同ブランドならではでしょうか。

 そしてUXの改良モデルも5月に公開され、夏に販売予定とアナウンスされています。

UXはCTの生産終了を受け、SUVのみならずブランドのエントリーモデルを担うクルマになりました。ジツはエントリーモデルが一番重要で、豪華モデルなら高額でもいいのでしょうが、エントリーモデルはリーズナブルに、かつレクサスの世界観を出さなくてはなりません。今回発表されたのUXは2リッターの直4を搭載するUX200と2リッター直4ハイブリッドのUX250hの2モデル。ボディの剛性向上や予防安全技術の機能などが拡充し、走りも装備もレクサスの門戸を広げたり、増車したいユーザーの期待に応えています。

 そしてRXの5代目へのフルモデルチェンジが発表されました。

目玉の一つはエクステリアのスピンドルグリルではないでしょうか。レクサスブランドにおけるデザインアイデンティティのスピンドルグリルは今回、ボディと一体感を持たせた「スピンドル・ボディ」へと進化しました。ボディサイズは全長は同じながら、全幅で+25mm、全高で-10mm、ホイールベースは+60mmに。ホイールベースの延長は後席のスペースを増やし、より快適性が高められているようです。インテリアはステアリングスイッチとヘッドアップディスプレイを連携させる、NXでも使われる「タヅナコンセプト」を採用、視線の不要な移動を減らし運転時には疲れにくく、快適なコクピットに。

 用意されたパワートレインはFF、4WDの選択が可能な2.4リッター直4ターボ、2.5リッター直4のハイブリッド。また4WDのみの設定になる2.5リッター直4搭載のプラグインハイブリッド、2.4リッター直4ターボのハイブリッドの4つ。スポーティなFスポーツもそのまま設定されていますが、今回のRXは攻めに攻めています。Fスポーツの上をいくFスポーツパフォーマンス(以下FP)が設定されています。かの富士スピードウェイに由来するFスポーツにパフォーマンスが付きました! なんか凄そうですよね。モノマガも年1回くらい特別豪華付録付きスーパーゴールデンデラックス的な別冊を出した暁にはぜひ「モノマガジンスーパーパフォーマンス」とかいいたいモノです。

 さて、そのFPがどのくらい攻めているかというと、車高の高いSUVながら、高いコーナリング性能を持ちそうなのです。発表によりますと低速時の旋回性や取り回しの良さ、高速域では高い車両安定性を実現とあります。それは何か。「ダイナミック・リア・ステアリング」の採用。コレは車速に応じて後輪を前輪と逆位相/同位相に最大4度転舵させるモノ。いわゆる4WSシステムです。

 4WSは1985年に日産・スカイライン(R31型)が世界初採用。

その後1987年にはメカニズムは違いますがホンダ・プレリュード、マツダ・カペラや三菱・ギャランにも存在していましたが、一旦は下火に。しかし最近ではラージサイズクラスの取り回し性能の向上などで4WSが復活、レクサスでも採用車種が増えています。またマニア的には難攻不落のニュルブルクリンク(編集部注:ドイツにある難サーキットで各メーカーのテストが行われる)でFF最速と謳われたルノー・メガーヌやSUV最速に輝いたランボルギーニ・ウルスなど欧州車にも高速走行時の安定したコーナリング目的でも採用されています。

 RXに設定されたFPはそんなメカニズム以外にも、かなり気合いの入ったモノが多いのが特長です。例えばブレーキ。コレは完全にスポーツカーライクで、なんと対向6ピストンのフロントブレーキキャリパーを装備しています。また駆動系のキモの一つとしてダイレクト4を採用しました。乱暴に表現するとハイブリッドの4WDシステム、E-Fourがさらに進化した先進のAWD。前後のトルク配分や4輪の制動力もそれぞれにコントロールするモノです。パワーユニットもオドロキのモノがあります。エンジンにモーターは従来のハイブリッドなのですが、そのエンジン、FPはターボ付きが採用されています。すなわち2.4リッター直4ターボ+モーターなのです。ターボラグをモータでカバーするという発想です。

さらにミッションもトヨタあるあるのCVTではないのです。6ATを採用。しかもエンジンとモーターの間にはトルクコンバーターではなく、クラッチを使っているといいます。従来のトヨタ系ハイブリッドカーのイメージとは違う走りを実現するはず。タイヤも専用品といわれているFP、6月現在詳しいスペックなどは発表されていませんが、ジツに楽しみなクルマになりそうです。

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  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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