Re:STYLING MONO #33 ブラインドによって窓に対する考え方を根本的に変えた、稀有なブランド「ハンターダグラス」

#33 ハンターダグラス


オフィスだけでなく家庭内でも一般的な存在であるブラインドだが、その正式名称が“ベネシャンブラインド”だということをご存知だろうか?横型のブラインドの原型が歴史上初めて登場したのはベニスだといわれている。そう、水の都で名高いイタリアの観光都市ベニスである。ベニスは21世紀のいまも、水上交通のみの運河の街である。そこでの生活は普通の土地とは異なり、常に窓から入ってくる水の反射を気にしなければならないという特殊な事情がある。つまり、窓の遮光は空からの太陽光だけではなく、運河からの反射光も考慮に入れなければならない土地なのだ。この地で上方(太陽)からの光と下方(水面)からの光をコントロールする横型のブラインドが発達したのはそんな理由があったわけである。横型ブラインドの最大の利点は1日の時間によって変化する光のコントロールを容易にした点。世界最高のシェードを生み出し続ける『ハンターダグラス』は、このベネシャンブラインド製造から歴史をスタートさせた。光と生活の調和を追及するブランドの真実を追ってみよう。

ハンターダグラス社が設立されたのは1946年のこと。ブラインド製造の会社としてスタートしたが前身は創業者の一人であるヘンリー・ソネンバーグが、アメリカ移住前にドイツで経営していた工業機械の製造販売会社(1919年創業)である。


カーテンやブラインド、シェードなど、室内側から窓を機能的に演出するウインドウ・トリートメントにはさまざまなタイプのものが揃っているが、『ハンターダグラス』が世界の傑作品としての評価を受けているのには当然のようにいくつかの理由がある。まず、一般的なブラインドとの決定的な違いは、普通のブラインドは“遮光”という概念でのモノ作り。一方『ハンターダグラス』のシェードは「光を採り入れる」ことをコンセプトにデザイン・設計がなされている。光の遮断ではなく、外光との共存。厳選されたファブリックが採用され、室内への採光は柔らかく機能的に、そして外部からの目隠し効果は上品に。

さらに『デュエット』シリーズのように優れた断熱性という機能面での魅力も、見逃してはならない。このシリーズはシェードの中にハニカム(蜂の巣)構造を持たせ、内部に空気層を作ることで夏期は窓からの日射熱をカットし、室内の冷房効果をアップ。冬期は外部からの冷気の進入を遮断し同時に暖房効果を高めるという、素晴らしい機能性を誇っている。

ブラインドではなく、カーテンでもない。ハンターダグラスのシェードはインテリア的には窓が重くなるカーテンやガラガラと開閉時の音がうるさいブラインドとは異なり、スムーズな開閉と部屋を広く見せる効果を持ち、両方の長所を持つウインドウ・トリートメントである。

夏は涼しく、冬は暖かく。「デュエット」のシリーズは、節電意識が高まる昨今だからこそ注目したいシェードである。日中はレース、夜は遮光という多彩な操作システムも魅力。特に素晴らしいのはトップダウン・ボトムアップという独自のシェード操作。左ページの写真のように窓の上部、あるいは下部を開放したり、レースで目隠ししたりという使い方が楽しめるデザインである。高窓の吹き抜けなどに便利な電動のオプションも用意されている。

『DUETTE/デュエット』シリーズ。
豊富なカラー展開と10種類のファブリック。
窓のサイズに合わせて1㎜単位での注文が可能。

遮光ではなく光を採り入れるこのコンセプトが名品の所以。


 1946年、ヘンリー・ソネンバーグとジョー・ハンターにより創業された『ハンターダグラス』社は、窓にかけるブラインドの製造会社としてスタート。前項の創業当時の広告にあるように、素材にアルミニウムを使ったことが同社の売りだった。当時は新素材として注目を集めていたアルミニウムの、一貫した鋳造技術を独自開発して軽量なブラインドを生み出したのである。ソネンバーグがドイツで工業機械の製造販売会社を創業したのは1919年。その後、オランダへと移転し、大恐慌からの復興で勢いが出てきた1940年にアメリカへ移転。そしてジョー・ハンターと共にハンターダグラス社を興した。現在は本拠地を再びオランダへと移している。

 同社のシェードがこれほどの名声を得たのには、もちろん機能が優れていたという理由が第一だろうが、同時に、終戦翌年の1946年からスタートしたという時流に乗った勢いも見逃せない。アルミニウム製ブラインドの「フレクサラム」という最初の製品は、明るく開放的な空間を演出した当時の建築やインテリアにマッチしていたのだ。近未来のリビングルームの姿として万博で注目を集めた開放的な窓は、インテリアの考え方として、従来のカーテンよりもブラインドのほうが圧倒的にスタイリッシュに見えたのである。こうしてアメリカの家庭やオフィスの窓を飾るようになった同社は着々と業績を伸ばし、1986年にはバーチカルブラインドを開発・製品化した。

 このバーチカルブラインドの開発で、アルミニウムに代わって採用されたのがファブリック。同年に発売されたハニカム構造の「デュエット・シェード」は、光を自在にコントロールする画期的な機能を持ち、1990年代に発売された「シルエット・シェード」では、エレガントなウインドウ・トリートメントの世界をより高いレベルで完成させている。窓に対する考え方を根本的に変えた、稀有なブランドといえるだろう。

建築家やインテリアデザイナーなど多くのクリエイターがウインドウ・トリートメントとしてセレクトする。人気の「シルエット・シェード」ではシェードを下ろした状態で室内からの視野が約80%と、プライバシーと景観の両方を同時に確保している。

コンパクトかつスマートな設計で、デザイン的な完成度が高い『SILHOUETTE/シルエット』シェードは、人気のシリーズ。繊細なファブリックなのに静電気防止加工で汚れにくく、お手入れも簡単。紫外線はシェードを閉じた状態で99%、スラットを開いた状態でも最大88%もカット。そこで暮らす生活者の身体を守り、同時に大切な家具の日焼けからも防御してくれる。窓面と室内面のレースの素材感も変えてある。

こちら「デュエット・シェード」のハニカムのサイズはファブリックの種類によって2タイプ。後加工で防炎加工することもできる。

カーテンが持つ繊細なファブリックの質感とブラインドの機能を兼ね備えた「シルエット」は新しいシェードのスタイル。ファブリックのスラットを調整することで、多角的に自然光を採り入れる。窓はもうひとつの照明器具である。


ハンターダグラスの創業者の一人であるヘンリー・ソネンバーグ。

ヘンリー・ソネンバーグは1919年にドイツのデュッセルドルフで工業機械の製造販売会社を興した。1933年にはオランダのロッテルダムに移転し、1940年にアメリカへ。現在はオランダに本社を置く。

『LUMINETTE/ルミネット』シェード。透け感と縦のラインが美しいシェードで布製のベイン(羽)が回転して光の量を調節する仕組み。素材はポリエステル100%。6種類のファブリックと豊富なカラーバリエーション。高い窓の部屋に適している。

『FACETTE/ファセット』シェード。レースの採光部と布地の非採光部を交互に配置したシェード。ファブリックをわずかにスライドさせることによって、自然光とプライバシーをコントロールする。防炎仕様の難燃ポリエステル「トレビラCS」が100%採用されている。

まずはハンターダグラスのショールームへ行ってみる


 インテリアのアイテムはまずはショールームで現物を見るのが鉄則。ちなみにハンターダグラス製品のデザインはオランダやアメリカで行われているが、製造はその国ごとに受注生産。1㎜単位での注文が可能である。生産システムが完成しているので納期も10日ほど。注文はインテリアショップや最寄の百貨店などでも可能だ。


初出:ワールドフォトプレス発行『モノ・マガジン』2012年8月2日号


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土居輝彦(teruhiko doi)
  • 1982年より㈱ワールドフォトプレス社の雑誌monoマガジン編集部へ。 1984年より同誌編集長。 2004年より同社編集局長。 2017年より同誌編集ディレクター。 その間、数々の雑誌を創刊。 FM cocolo「Today’s View 大人のトレンド情報」、執筆・講演活動、大学講師、各自治体のアドバイザー、デザインコンペティション審査委員などを現在兼任中。