[#066]H.モーザーがスイス・メイドの規定を批判し、100%スイス製の時計を発表。 「スイス マッド ウォッチ」

文/香山知子/『世界の腕時計』編集長


「スイス マッド ウォッチ」。直径41.0㎜、厚さ9.4㎜のケースに手巻きのCal.HMC327(29石、毎時1万8000振動、パワーリザーブ約72時間)を搭載する。サファイアクリスタル・バック。ケース素材の50%はチーズだが、チーズ臭さはない。


1月16日からスイス・ジュネーブで開催された第27回国際高級時計サロン(SIHH)には今までで最多の30ブランドが新作を発表した。リシュモン グループを中心とする17ブランドに加えて、昨年からは独立系の小規模ブランドが出展し、個性あふれる製品を披露している。その独立系のひとつ、H.モーザーがウィットに富んだユニークピースを発表した。名付けて“スイス マッド ウォッチ”。

日本語に訳すと「スイスの怒れる時計」といったところだろうか。スイスでは2017年1月1日からスイス時計の「スイス・メイド」の規定が改定され、部品の60%がスイス製の時計には「スイス・メイド」と表示できることになった。従来は50%と規定されていたため、実際には厳しくなったのだが、H.モーザーは「60%なんて甘い、うちは95%だ」、とこの規定を批判し、まさに100%スイス製のパーツを使ったスイス マッド ウォッチを発表したのだった。

ところで95%がスイス製なら残りの5%は何か。これはストラップに使われるアリゲーターと、ケース素材のゴールドやステンレススチールで、これらは原産地がスイスではないためだ。しかしスイス・メイドの規定では原産地までは問われず、スイスで製造されていればスイス製となる。

さてスイス マッド ウォッチではケースはスイスのチーズ“ヴァシュラン モンドール”と、カーボンナノチューブを使った複合素材の製造にも使われるitr2をそれぞれ約半々の割合で混ぜたものを採用。またストラップはヴァシュランモンドールの原材料である牛乳を生産する農家の牛の革が使われた。

文字盤はスイス国旗をイメーシし、H.モーザーの時計の特徴となっているグラデーションのフュメ文字盤の赤を背景に白で12、3,6,9時にダブルのバーインデックスが描かれる。

1点製作で価格は108万1291スイス・フラン。この数字はスイス建国の日の1291年8月1日にちなんでいる。販売収入は部品製造がアジア諸国に移行し、経済的に苦境に立たされている独立系の時計部品製造サプライヤーを支援する基金創設のために全額、使われる予定だ。

またスイス マッドウォッチと同じコンセプトで限定50個の“ベンチャー スイス マッド ウォッチ”も登場した。これはケースが18Kホワイトゴールド製で、「スイスには金鉱がないので、ケース素材はスイス産ではありません。しかしケースそのものはスイスで製造されています」とH.モーザーは語っている。

スイス マッドウォッチとベンチャー スイス マッドはH.モーザー製の手巻きムーブメント、Cal.HMC327を搭載する。

なおH.モーザーでは今後、文字盤に「スイス・メイド」の文字を入れないことを決定した。これは「95%以上の部品がスイス製なのに、60%を満たしただけで“スイス・メイド”と表示する他社と一緒にされたくない」という自負の表れでもある。

HモーザーのホームページではCEOのエドゥアルド・メイラン氏をはじめ社員たちが出演しているスイス マッドウォッチの動画を公開中。
www.h-moser.com/jp/


「ベンチャー スイス マッド」。直径39.0㎜、厚さ11.9㎜の18KホワイトゴールドのケースにCal.HMC327(29石、毎時1万8000振動、パワーリザーブ約72時間)を搭載する。サファイアクリスタル・バック。手縫いのスイス製牛革ストラップ。価格243万円。限定50個。3月発売予定。