[#054] 独立時計師 菊野昌宏氏の不定時法腕時計を展示

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文/香山知子/『世界の腕時計』編集長

菊野
今年のバーゼルワールドで発表された菊野昌宏氏の「和時計改」。ケース・サイズは縦42㎜、横34㎜で、素材は酸化青銅とステンレススチールが用いられている。ムーブメントは手巻きのCal.mk15(21石。毎時2万8800振動。パワーリザーブ約50時間)。年間製造1~2個(受注生産)。予価1944万円。


前職は陸上自衛隊隊員という異色の時計師、菊野昌宏さんは日本人初の独立時計師協会の正会員だ。
2011年、その第一作目となる「不定時法腕時計」が完成した。季節の変化に応じて一刻の長さが異なる「自動割駒式和時計」を腕時計の大きさにまで縮小したもので、12の干支がインデックスになっている。この時計が独立時計師フィリップ・デュフォー氏の目にとまり、スイスの独立時計師協会(AHCI)に日本人では初めて推薦された。そして11年に準会員として認められ、13年には正会員の資格を得た。

AHCIは1985年に独立時計師スヴェン・アンデルセン氏、ビンセント・カラブレーゼ氏によって設立され、フィリップ・デュフォー氏、アントワーヌ・プレジウソ氏、フランソワ-ポール・ジュルヌ氏などが名を連ね、今日では11カ国、33人のメンバーが所属している。

菊野氏が2011年に発表した時計は縦50㎜、横40㎜、厚さ16㎜で、ETACal.6498をベースとしたムーブメントを搭載していた。そして今年のバーゼルワールドでは、この時計を改良し、よりコンパクトにした「和時計改」を発表。新作は小型化しただけでなく、北緯51.3度(グリニッジ)から南緯51・3度の範囲に対応し、ひとつのカムを交換するだけで様々な緯度の昼夜の長さに対応できるという特徴を備えている。

「和時計改」の製作にあたっては、セイコーホールディングス、セイコーウオッチ、セイコーインスツルの3社が協力を行った。これはすべて日本製部品を使って製作したい、という菊野氏の希望があったためで、セイコーの手巻きキャリバー8Lシリーズをベースに、菊野氏が独自に開発、製造した部品を組み合わせた、キャリバーmk15が誕生。またインデックスの干支の文字は時計の彫金細工を専門とする金川恵治氏が担当している。

この時計が銀座・和光で6月10日まで、その後はセイコーミュージアムで展示される。セイコーミュージアムには江戸時代に製作された和時計も展示され、菊野さんの腕時計の原点、そして日本独自の時計文化に触れることができる機会となる。

【展示期間】
①2015年6月4日(木)~6月10日(水) 銀座・和光(東京都中央区銀座4-5-11)
②2015年6月16日(火)~6月30日(火) セイコーミュージアム

菊野
菊野昌宏さん。1983年2月8日、北海道生まれ。高校卒業後に自衛隊に入隊。除隊後の2005年にヒコ・みづのジュエリー・カレッジのWOSTEPコースに入学し、08年に同コースを卒業。自衛隊時代、機械式時計好きの先輩がいたことが、時計への興味につながったという。ヒコ・みづのの卒業生たちは時計修理の道に入るのが通例だが、「修理ではなく、時計を作りたい」という強い思いから、卒業後は同校の研修生、10年からは講師助手を務めながら、時計製作を始めた。
http://www.masahirokikuno.jp/

菊野
和時計を展示するセイコーミュージアム。
東京都墨田区東向島3-9-7
(10:00~16:00/月曜休館)
要予約 電話03-3610-6248
http://museum.seiko.co.jp