[#049] チェコ唯一の時計メーカー“プリム”を取材

世界の腕時計

文/香山知子/『世界の腕時計』編集長

チェコ唯一の時計メーカープリムの工場
写真・上/(右)ノヴェー・メェスト・ナド・メトゥイは「メトゥイ川の上の新しい街」を意味する。さまざまな様式の建物と自然が美しい。(左)1970年に建設されたプリムの工場。写真・下/(右)最新のCNCマシンも導入され、部品の製造がおこなわれている。(左)ムーブメントの組み立て。


チェコ北東部、シレジア地方のノヴェー・メェスト・ナド・メトゥイにチェコ唯一の腕時計メーカーがある。自社でムーブメント、ケース、文字盤、針を製造できるマニュファクチュールであり、「端整」を意味する“プリム”がブランド名だ。その時計がまもなく日本で正式に発売される。

プリムが誕生したのは第2次世界大戦後のこと。1949年、当時のチェコスロバキアでは、共産政権下で国策として時計製造がスタートした。それまでチェコスロバキアには1890年から1930年の間にクロック・メーカーは存在したが、懐中時計や腕時計が作られたことはない。しかし第2次世界大戦後、時計の輸入が困難という理由で、国内でのクロックと腕時計の製造に踏み切ったのだった。

まったくのゼロからのスタートで、もちろん国内に部品を製造するメーカーもなく、ムーブメントも外装も、腕時計に必要な部品の製造をマスターしなければならなかった。ヒゲゼンマイやゼンマイなど一部の部品はドイツから輸入し、1958年、“スパルタク”と名付けた腕時計が市場に送り出された。やがてプリムというブランド名はチェコでは腕時計の代名詞となり、1990年までに約50万個が製造されたという。

東ヨーロッパに自由化の波が訪れた1990年前後、チェコスロバキアも例外ではなく、1989年11月には共産党政権が倒れ、民主化へと流れが変わった。1993年にはチェコとスロバキアは平和的な分離を果たした。しかし自由化はプリムには打撃でもあった。工場は民営化され、製造の50%以上を占めていた軍用品の製造も中止された。やがて自社でのムーブメント製造を中止し、規模を大幅に縮小した。

最盛期には1200人以上が働いていた工場も、現在では50人程にすぎない。しかし2009年には過去の自社製ムーブメントに改良を加えた、手巻きと自動巻きのムーブメントの製造を開始。そして現在ではこれら自社開発・製造ムーブメントを搭載した、1950年代から60年代に作られたモデルの流れを汲むデザインの腕時計を年間におよそ1500個、製造している。

日本へは、“ディプロマット”、“パヴーク”、“スパルタク”、のラインが輸入され、いずれもステンレススチール・ケースとゴールド・ケースがある。小ぶりなケースでアンティーク風な味わいがあり、シースルー・バックを通してムーブメントを見ることができる。

プリムの詳細は、「世界の腕時計」No.121(9月8日発売)をご覧ください。

商品についてのお問い合わせ
●ブレインズ プレスルーム 03-3510-7961

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「ディプロマット」。外交官というモデル名にふさわしい知的なイメージのモデル。直径40㎜、厚さ14㎜のSSケース。自社製自動巻き、Cal.98(22石。毎時2万1600振動。パワーリザーブ約45時間)。5気圧防水。価格59万4000円。

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「パヴーク」。モデル名は蜘蛛を意味し、ラグのデザインとハートのモチーフを入れた文字盤が特徴。直径34㎜、厚さ11㎜のSSケース。自社製手巻き、Cal.94(17 石。毎時2万1600振動。パワーリザーブ約48時間)。 5気圧防水。価格49万6800円。

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「スパルタク40」。日付付きの自社製自動巻き、Cal.96(22石。毎時2万1600振動。パワーリザーブ約45時間)を、直径40㎜、厚さ13㎜のSSケースに搭載する。5気圧防水。価格45万9000円。

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「スパルタク36」。1959年に発表された、プリム初のモデルと同じ名前で、勇猛さを意味し、また古代都市の名称でもある。直径36㎜、厚さ11㎜の18Kローズゴールド・ケース。手巻き、Cal.94(17石。毎時2万1600振動。パワーリザーブ約48時間)。5気圧防水。予価99万3600円。SSモデルは価格42万6600円。