[#041]クールジャパンを表現する「テルイ&サクラダ 雫石 ”RS-1”」

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文/香山知子/『世界の腕時計』編集長

テルイ&サクラダ 雫石 ”RS-1
直径40㎜のプラチナ・ケースに、ヤマタノオロチの立体的な彫金が文字盤から裏蓋へと続いている。搭載する手巻き、Cal.NB99(26石。毎時2万1600振動。パワーリザーブ約37時間)は厚さが1.98㎜の薄型ムーブメントだ。日常生活防水。価格1155万円


今秋、日本発信の機械式時計のコレクションが誕生した。名付けて「テルイ&サクラダ 雫石」。雫石は盛岡セイコー工業内に設けられた雫石高級時計工房を、テルイは同社の彫金師、照井清さん、サクラダは同社の時計師、桜田守さんを示している。おふたりは「現代の名工」に選ばれ、黄綬褒章を受章した熟練職人だ。

このコレクションは東京の時計輸入・販売会社のビック・グローブが「世界で通用する日本の機械式時計を作りたい」という思いから企画・発案し、雫石高級時計工房が行っているセミオーダーシステムを利用したものだ。つまりビック・グローブのオーダーに基づいて雫石高級時計工房の照井さん、桜田さんが製作している。

とはいえ実際には、セミオーダーというよりオーダーメイドと表現した方がふさわしく、既存の薄型手巻きムーブメント、NB99をベースに写真のように立体的なヤマタノオロチを照井さんが彫金している。ケースも専門メーカーの林精機がこのコレクションのために新しく金型を設計した。照井さんにとっては立体的なモチーフの彫金は初めてのことで、「新しい挑戦にわくわくした」と語っている。桜田さんも、彫金されたムーブメントを見て、「こんなのは初めて!」と驚いたという。

モデル名のRS-1はライジングサンを意味し、「日出国=日本」を表し、文字盤を見ると、彫金の周囲は放射状のカッティングを入れたマザー・オブ・パールのリングで縁どられ、日の出がイメージされている。

企画がスタートしたのは2010年3月のこと。その1年後には震災に見舞われ、雫石は大きな被害を受け、企画の先行きも不透明となった。しかし、「今まで手がけたことがないものを作る」というプロジェクトは復興への勇気づけになったという。

試行錯誤を繰り返し、ようやく今年9月には製品が完成する。このコレクションは『古事記』のヤマタノオロチに因んで、毎年、オロチのデザインを変えたもの1作が作られ、8年間にわたって続けられる予定だ。1作品は8個限定となっている。

クールジャパンが話題になるこのごろ、日本人の技を伝える時計は世界でどのように評価されるだろうか。

雫石高級時計工房

1999年に「現代の名工」に選ばれた組立師、照井清さん

2002年に「現代の名工」に選ばれた彫金師
岩手県盛岡市にある雫石高級時計工房はセイコーインスツル(株)が2004年9月にリニューアルオープンした、高級機械式時計の組み立て工房。「歴史と伝統、先進テクノロジーとクラフトマンシップの融合」をコンセプトに、部品製造から完成品までの一貫生産を行っている。桜田守さん(写真上)は1999年に「現代の名工」に選ばれた組立師、照井清さん(写真下)は2002年に「現代の名工」に選ばれた彫金師だ。

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