[#024]今年のバーゼルワールドで発表されたセイコーの最新作は、39のタイムゾーンに対応する世界初のソーラーGPSウオッチ

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文・小野正章/『世界の腕時計』副編集長

セイコー アストロン


地球上のどんな偏狭な地にいても正確に動き、巻き上げや電池交換が不要な腕時計といえば、皆さんはどんな時計を想像するだろうか。3月8日から始まった今年のバーゼルワールドで、その回答にふさわしい腕時計、「セイコー アストロン」が発表された。

このネーミングを聞いてピンときた人はなかなかの国産時計通である。セイコーが1969年12月に発表するや、世界中に腕時計革命をもたらした初のクオーツ・ウオッチ「クオーツ アストロン」が由来となっているのだ。そんな時計史に名を刻むモデル名をふたたび新作に使ったのだから、セイコーの力の入れ具合がわかろうというもの。では、「セイコー アストロン」とは一体どんな時計なのだろうか。

従来、もっとも正確な時計とされていたのは電波時計であり、なかでもソーラー充電式の電波時計ならば、もはや電池交換も必要のない“最強”の腕時計であった。しかし、標準電波送信施設は日本と欧州に2局、北米、中国に1局と計6局しかなく、とても全世界をカバーするには至らなかったのも事実である。

そこでセイコーは2万キロメートル上空を周回するGPS衛星に着目した。もともと軍事用として開発・運用されてきたGPS衛星だが、現在ではさまざまな民生機器にも活用されており、その中にはGPSが搭載する原子時計(10万年に1秒の誤差)の時計情報もある。「セイコー アストロン」は新たに開発した超小型のGPSモジュールを搭載し、4基以上のGPS衛星からその時計情報を受信することで、現在いる場所の時刻を正確に示してくれる腕時計なのだ。

対応するタイムゾーンは39カ所。地球上のタイムゾーンは24カ所と思われがちだが、インドやベネズエラなどの+30分、ネパールの+45分といったように各国が独自に時差を定めているため39のタイムゾーンが存在する。もちろん、これらすべてのタイムゾーンに対応する腕時計というのは世界初のことである。

今回、腕時計にGPSを搭載することに成功したのはセイコーエプソンの超省電力技術による賜物だ。一貫して「省・小・精の技術」を追求してきた同社だからこそ、携帯電話などの情報機器に搭載していた従来のGPSモジュールを約5分の1にまでの低パワー化し、小型で高精度、そして低消費電力のモジュールを開発することに成功したのである。

防水性能は10気圧、耐磁性能はJIS耐磁1種、そして風防はスーパークリアコーティングのサファイアガラスでケースはブライトチタン(もしくはSS。ともにベゼルはセラミックス)。ジェットセッターのみならず、登山やセーリングといったアウトドアシーンでも活躍しそうだ。

クオーツアストロン
1969年12月25日に発売された世界初のクオーツ・ウオッチ「クオーツアストロン」。それまでのクロノメーター優秀級の機械式時計の日差が-3秒から+12秒であったのに対して、「クオーツアストロン」は±0.2秒以下という超高精度を達成した。45万円(18KGケース)という高価格にもかかわらず発売当日に完売したという。
セイコー アストロン
セイコー アストロン
4基以上のGPS衛星からの電波によって、ユーザーの緯度・経度、高度情報を特定し、現在地を測位。この位置情報を基に地球全体を100万個に分割したブロックの中から自動的に現在地のブロックを特定し、そのタイムゾーンの時刻を表示する「セイコー アストロン」。太陽光や蛍光灯などの光を電気エネルギーに変換して、ムーブメントを駆動するソーラー方式を採用するため電池交換は不要だ。西暦2100年2月28日までの日付修正が不要なパーペチュアルカレンダー機能を搭載する。価格15万2250円~21万円(全4モデル)。2012年9月下旬発売予定。