#436 決してひとりでは見ない方がイイかもよ!「アングスト/不安」

文/大谷暁(モノ・マガジン編集部)

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436 決してひとりでは見ない方がイイかもよ!「アングスト/不安」

1980年代、世界中でビデオが普及し始め、映画は自宅で観るという文化が根付き始めた。巷にはレンタルビデオ屋が溢れ、週末ともなると大賑わいとなったのを思い出す。そんな良き時代に、劇場公開作品はもちろん、日本未公開の傑作などももの凄い勢いでリリースされた。その中にはあまりの不人気によりビデオ屋から消えていったり、ワケありで封印されることになった作品も実は多い。しかし、ここ数年そんなレアでマニアックな作品が再びスポットを浴び始めている。

今回紹介する「アングスト/不安」もそんな1本。日本では劇場公開されず、1988年に「鮮血と絶叫のメロディー/引き裂かれた夜」というタイトルでレンタル用VHSが発売された。しかし、世の中に出回った数は極少、ほぼ誰にも観られることなく地下に埋もれ、以降観たくても観れない幻の作品となり現在に至った。なかなかマニア心をくすぐるエピソードであり、その筋の映画がお好きなご同輩にとってはまさにノド手ものの作品であります。

本作は、1980年にオーストリアで実際に起きた殺人鬼ヴェルナー・クニーセクによる一家惨殺事件を映画化した実録スリラー映画。刑務所を出所後の殺人鬼=狂人が感じる不安やプレッシャーによる異様な行動と心理状態を狂暴かつ冷酷非情なタッチと斬新なカメラワークを用いて表現。狂人自身のモノローグで綴る構造や全編に徹底された陰鬱なトーンなど、作品自体が「異常」であり、ほかに類を見ない芸術性を発揮した衝撃的な作品なのですが、1983年の公開当時はそのショッキングすぎる凄まじい内容により、本国オーストリアでは1週間で上映打ち切り、ヨーロッパ各国でも上映禁止、しかもイギリスとドイツではビデオも発売禁止となった。アメリカではXXX指定を受けて配給会社が逃げたという……。

そんな曰く付きの映画がついに日本で劇場されます。恐怖映画好きな筆者にとっては「ホラー映画」と言うよりも、60年代以前に流行った「ショック映画」と呼びたい。そんな古き良き時代の香りが漂う恐怖映画です。

上映禁止になる前に是非劇場に足を運んでくださいませ!

1983年/オーストリア/87分/カラー/ビスタ/R15+
7月3日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開中
配給:アンプラグド

©1983 Gerald Kargl Ges.m.b.H. Filmproduktion

アングスト/不安
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