#352 段ボールに恋した男の物語。 『旅するダンボール』

文/大谷暁(モノ・マガジン編集部)

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段ボールに恋した男の物語。 『旅するダンボール』


これまでも「旅する○○~」というタイトルがつく映画は数多く存在する。最近では映写機と映写技師に焦点を当てたドキュメンタリー「旅する映写機」(13)や、あのハマショーこと浜田省吾のコンセプチュアル・ライブ映像を限定上映した「旅するソングライター」(18)などの新しい取り組みには興味をそそられた。ちょっと古いが柳町光男監督のドキュメンタリー「旅するパオジャンフー」(95)や007シリーズでお馴染みの名匠ルイス・ギルバート監督によるコメディーの佳作「旅する女/シャーリー・バレンタイン」(89)ってのもある。また「旅するジーンズと16歳の夏」(05)というドラマも面白かった。

で、今回旅するのはなんと「段ボール」です。世界30カ国の街角に捨てられた段ボールを拾っては、可愛くてカッコいい財布にするという、世界が最も注目する段ボールアーティスト島津冬樹氏の活動に迫ったドキュメンタリーだ。東京で偶然見つけた可愛いポテトのキャラクターの段ボールがきっかけで、その源流を辿っていく旅の途中で出会う、この段ボールに関わった人たちとの温かい交わりを3年間に渡り追った作品だ。誰もが見向きもしない段ボールを使いデザイン&機能性を兼備した段ボール財布に生まれ変わらせるのだ。このような活動は、リサイクルや再利用という概念のさらに先を行く「アップサイクル」という世界的なムーブメントに発展しているという(スゴイ)。

 

ただ本人はそんな世界の評価とは裏腹に、只々段ボールが好きってとこが日本人っぽくてたまらない。実は筆者も家の近くのドラッグストアやコンビニでちょくちょく段ボールを貰う人。何に使うかというとこれから寒くなる季節に備え、ペットで飼ってるインコのカゴをさらに収納する段ボールのカゴづくり。ワンシーズンでボロボロになるから毎年段ボールを切って組み合わせてつくる。段ボールって本当に暖かいんですよ(インコは話しませんが)。というわけでこの映画を見終わった後は、家の中にある引っ越しの段ボールや、アマゾンの段ボールだってきっと愛おしくなるハズだ。今度は「旅するペットボトル」ってのはどう?

2018年/日本/91分、配給/ピクチャーズデプト。12/7(金)YEBISU GARDEN CINEMA/新宿ピカデリーほか全国順次公開
『旅するダンボール』公式HP:www.carton-movie.com

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