#346 見応え読み応え十分、腹は十二分目のアンティークロレックス特集

文/小野正章(モノ・マガジン編集部)

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ジャン・クロード・キリー
グルノーブル五輪でアルペン三冠王に輝いたフランス人スキーヤー、J.C.キリーが愛用したことで知られるトリプルカレンダー・クロノグラフ。1958年に300個しか作られなかったというから、存在自体がもともとレア。写真/アンティコルム


本誌9月16日号(9月1日発売)では、ひさびさのロレックス特集。それもアンティークだけを53ページで紹介しています。

不肖・筆者もこれだけのボリュームでロレックスをやるのは約20年ぶり。当時は時計専門誌に在籍していました。その間、アンティーク業界も順風満帆という訳ではなく、店仕舞いしたところもあれば見切りをつけて、現行品に切り替えたショップもあります。つながりの深かったお店がなくなっていたのは寂しい感もありますが、一方で新規オープンするロレックス専門店もあり、栄枯盛衰というか、時の流れを感じてしまいます。

もっとも、何より驚かされたのはアンティークロレックスの評価基準の変貌ぶりでした。以前は多少部品が交換されていたり、塗り直されたりしていても、見た目の美しさが高評価のポイントになりました。しかし、現在はいかにオリジナル性を維持させているかが評価の基準になっています。

つまり、少しでも手が加えられた個体より、経年変化によって針や文字盤が焼けていても(もちろんキレイな方が尚価値は高い)、まったく手が加わっていない個体の方が価値があると見なされるわけです。

そんな流れを反映してか、20年前には存在しなかった新しい呼称も誕生ています。

たとえば、“トロピカルダイアル”。これはブラックのミラーダイアル(陶板文字盤)が長年太陽光に晒されたことで、ブラウンに変色したモデルのことです。(ただの劣化じゃないか!なんてツッコミは止めてください)

また、“スパイダーダイアル”というのもあります。これはやはりミラーダイアルの表面がひび割れて、割れ方がまるでクモの巣のようになっていることから、そう呼ばれます。どちらも偶然の産物ながら、非常にレアということでプレミアム価格の取引きだとか。もう唸るしかありません(笑)。

時の流れといえば、以前はよく見かけたものの、いまではほとんど見ることのできなくなったモデルもあります。

そのひとつがクロノグラフ。傑作と呼ばれる手巻きキャリバー、ヴァルジュー22を搭載した40~50年代のモデルはもとより、ポール・ニューマンやジャン・クロード・キリーといった愛称で呼ばれた60~70年代のクロノグラフなどもまったく見られなくなりました。

これらのクロノグラフは、取引相場があまりにも高額(数千万から億単位)になったため、マーケットに流通しなくなったのだとか。

もうひとつ付け加えるなら、50~60年代に製造されたイナズマ針のミルガウスにも出会えなかったことが残念です。たぶん今後も現物を見ることはないかも知れません(泣)。

ともあれ、誌面で紹介したアンティークロレックスは160点以上。皆さん、興味があろうとなかろうと、これを読めばロレックスが語れます。通にもなれます!? ぜひご一読を。

■モノ・マガジン2018年9月16日情報号
http://www.monoshop.co.jp/products/detail.php?product_id=7052

※本ページ掲載の写真は、クリックすると拡大してご覧いただけます。

トゥルービートトゥルービート
今回の特集で個人的にもっとも欲しいと思ったのが、このモデル。自動巻きながら、まるでクオーツウオッチのように秒針がステップ運針するという珍品です。写真/アルファオメガ

ミルガウスミルガウス
高磁場で働く人のために開発されたプロユース・モデル。とくに初期タイプは秒針がまるでイナズマのような形状だったために市場での人気も絶大。現在は復刻モデルが発売されている。写真/アンティコルム

バブルバックバブルバック
いつの時代も人気なのが世界初の完全防水自動巻きモデルとして知られるバブルバック。なかでもローマ数字とアラビア数字のインデックスにベンツハンドを組み合わせた“ユニークダイアル”は根強い人気をもつ。 写真/プライベートアイズ

バブルバックバブルバック
バブルバックの中にはケースとラグを覆い隠すフーデッドを備えたモデルが存在する。もともとは南米向けに製造されたたが、当地で不人気だったため生産数も少なく、それが現在では人気の理由になっている。写真/OKADAYA

スパイダーダイアルスパイダーダイアル
経年変化によってミラーダイアルの表面にひび割れが入り、その形がクモの巣状になった個体のこと。写真/アンティコルム