#324 祝! アカデミー賞作品賞受賞のファンタジー 「シェイプ・オブ・ウォーター」

文/大谷 暁(モノ・マガジン編集部)

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日本時間の3月5日(月)、記念すべき第90回アカデミー賞授賞式にて、作品賞、監督賞(ギレルモ・デル・トロ)、作曲賞(アレクサンドル・デスプラ)、美術賞(ポール・デナム・オースタベリー、ジェフリー・A・メリヴィン、シェーン・ヴィア)の最多4部門を受賞した。

ここ数年のアカデミー賞最優秀作品賞受賞作品の傾向をみると、エンタメ色の強い作品はゴールデングローブ賞は受賞するが、アカデミー賞の方は敬遠され気味なのかと思っていた。昨年の「ラ・ラ・ランド」も見事なオチでズッコケさせてもらいました。業界的にはいろいろと事情もあるのでしょうが、個人的には何年経っても色褪せない時代を超越した作品が受賞すべきだと思っている。

今回紹介する「シェイプ・オブ・ウォーター」はまさにその考えに該当する傑作。5年後、いや10年後でも映画を見終わったら「あー面白かった」と思うはず。それで良いんです。何回見ても楽しめるのがリアルな傑作。先日、深夜番組で舞台俳優の市村正親さんが、「傑作だったら同じ舞台でも何百回演じても飽きない。でも駄作は飽きるけどね」と言っていた(笑)。

過去を振り返ると前述の「ラ・ラ・ランド」(16)をはじめ、「ゼロ・グラビティ」(13)、「アバター」(09)、「E.T.」(82)、「2001年宇宙の旅」(68)などの傑作がアカデミー賞最優秀作品賞受賞を逃しているというから驚きだ。

そもそもファンタジー作品の受賞は難しいとも言われてきた。ちなみにそのジンクスを破ったのは「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」(03)であった。本作は「パンズ・ラビリンス」(06)のギレルモ・デル・トロがメガホンをとるので当然ながら、ただのファンタジーでは終わらないので御用心。

舞台は1962年、米ソ冷戦の時代のアメリカ。政府の極秘研究所で働くイライザは、秘かに運び込まれた不思議な生きものを目撃してしまう。アマゾンの奥地で神のように崇められていたという“彼”(この時点で「大アマゾンの半魚人」(54)へのオマージュということが判明する)の奇妙だがどこか魅惑的な姿に心を奪われたイライザは、周囲の目を盗んで会いに行くようになる。子どもの頃のトラウマで声が出せないイライザだったが、“彼”との間に言葉は必要なかった。やがてふたりの心が通い始めたとき、“彼”が間もなく実験の犠牲になると知る。そして彼女は“彼”を救うため、国を相手に毅然と立ち上がるのだが……。

ヒロインのイライザを演じるのはサリー・ホーキンス。そしてイライザと“彼”を追い込んでいく残酷なエリート軍人ストリックランドを「マン・オブ・スティール」(13)のマイケル・シャノンが演じている。脇役陣も盟友揃い。すべて監督自らがオファーしたという絶妙のキャスティングが実現している。イライザの同僚ゼルダ役にオクタヴィア・スペンサー。また心優しき隣人ジャイルズ役にはリチャード・ジェンキンスが扮している。

そして“彼”に扮するのはデル・トロ監督の「ヘルボーイ」でエイブ・サピエンを演じて絶賛されたダグ・ジョーンズ。ワイルドな身のこなしに宿るピュアな心を演じきり魅力的かつ官能的なキャラクターを生み出した!

アンデルセンの「人魚姫」をモチーフに、古くは「キングコング」から「シザーハンズ」や「美女と野獣」まで、種族を超えた誰も見たことがない究極のラブストーリーが誕生した。但し見方を変えればサスペンスフルホラーファンタジーでもあるけどね! お後がよろしいようで。 

2017年アメリカ映画/2時間4分 全国ロードショー公開中! 

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配給:20世紀フォックス映画
©2017 Twentieth Century Fox