#321 絶景。十和田の夜更けに現れる

写真/門山隆 文/本田賢一朗(モノ・マガジン編集部)

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馬門岩/ずばりテーマは「氷」、透明から乳白、アイスブルーへと刻々と変化する氷の色を演出し、岩や氷柱の存在感を際立たせる。


日本の冬の風物詩に新たな項目が書き加えられる。青森県十和田市と星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル等の地方観光事業者、そしてパナソニック エコソリューションズ社が連携して取り組む『氷瀑ライトアップツアー』だ。「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」は十和田八幡平国立公園内に位置し、奥入瀬渓流沿いの宿泊施設。そもそも国内に冬季入園できる国立公園は限られているので、ここを拠点に14の滝がある奥入瀬渓流にアクセスできる点で非常に貴重だ。

最近では、北海道の層雲峡など氷瀑をライトアップしお祭りにするようなところも増えているが、この奥入瀬渓流は国立公園特別保護地区であるため電源供給工事を行なうことができず、照明を常設することはできない。生態系保護の観点からしてもライトアップする時間も必要最低限に抑える必要がある。そこで解決策として出されたのが、ツアーバスと伴走しスポット毎に演出パターンを変えてライトアップする照明車の導入だ。

この専用照明車に搭載されているシステムがパナソニック エコソリューションズ社の『ダイナペインター』。昨今「ダイナミック演出」として全国各地の自然景観、街並みや建造物などの照明デザインで実績を上げているLEDカラー投光器だ。独自の光学設計により狙った箇所にムラなく、鮮やかで美しいカラーライトを当てることができるため、雪の状況によってクルマの停車位置を変更せざるを得ない雪国の厳しい自然条件の中でも安定したライトアップができる。また瞬時点灯が可能なため、ストップ&ゴーをしながら短時間照射を繰り返すことができる点も特長だ。

ツアーで回る全4箇所のスポット毎に奥入瀬の自然を育んだ「氷」や「浮世絵」「カルデラ湖」といったテーマを設け、照明演出を変えている。同社・ライティング事業部の籠谷葵さんによると「氷や雪は反射率が高く、光の色が映えやすい。テーマに沿ったトーン、また氷瀑だけでなくその周辺の樹々の陰影などの見え方まで計算し、景色として面白くできるように照射角度も試行錯誤を重ねました」。とはいえ、月明かりがあったり気温によって凍結度が違うなど、気候条件次第で異なる表情を見せる。

十和田市観光商工部の小泉和也さんは「十和田市住民も、昔から薄々はこの氷瀑はすごいんじゃないかとは思っていたのですが、冬には路線バスも全部止まってしまいますし、道路灯もないので、夜は地元の人間でもほとんど来ることはありません。奥入瀬は夏や紅葉シーズンには観光客たちで賑わいますが、<馬門岩>はよくある断崖としか思わず、特に気に留めず通り過ぎているかもしれません。ただ、岩から滲み出る水分が冬になると氷柱になり、普段気づかない奥入瀬の光景が現れます。ましてや夜の氷瀑は知られることはありませんでした」と言う。

この冬始まったばかりのツアーながら訪日外国人観光客の参加も多く、直近の約1ヶ月間で参加者は約2,000人を超える。

普段気づかない光景に文字通り光を当て、奥入瀬の絶景は夜も更けた頃に現れる。


氷瀑ライトアップツアー (星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル)
~3月18日まで。18時~19時/19時30分~20時30分
宿泊者限定/無料/定員20名(最小催行人数1名)
申し込みはチェックイン後、各開催時間30分前までアクティビティデスクで予約受付
天候により、中止や時間、場所が変更になる場合があります。
※十和田市主催ツアー「冬の奥入瀬ナイトツアーバス」でもライトアップが見ることができる。
 詳しくは https://oirase-winter.com


※本ページ掲載の写真は、クリックすると拡大してご覧いただけます。

千筋の滝/水量の豊かな奥入瀬渓流には大小14の滝があり、最下流にあるのが千筋の滝。水量は多くないものの趣のある風景が楽しめる。水量が少ないからこそ早い時期に氷瀑ができる。演出テーマは「カルデラ湖」。夜明け前の薄水色から陽が昇り始める薔薇色に変化する十和田湖をイメージしている。
雲井の滝/高さ20mの迫力ある滝の全景を演出。テーマは「浮世絵」。荘厳さと浮遊感が実に幻想的。赤系の色でライトアップ。
三乱の流れ/奥入瀬らしい美しさが味わえるツアーの最後に訪れるスポット。テーマは「牡丹雪」。渓流の奥の森の広がり、樹影、岩に積もった綿帽子など光の当たらないところにツアーのエピローグが見える。
星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル
星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル
青森県十和田市大字奥瀬字栃久保231
TEL0570-073-022(星野リゾート予約センター)
JR八戸駅、青森駅から無料送迎バスあり(要予約)

写真は露天風呂とテラスがついた「渓流和室 露天風呂テラス付」。3室のみとあって予約は真っ先に埋まる。価格3万1500円~(1泊2食付き2名1室利用。1名あたり。税・サービス料込み)八甲田の温泉を引いた眼下に渓流が広がる渓流露天風呂。冬季限定として壁に氷瀑を作り上げた「氷瀑の湯」が登場。生のりんご約1800個が並ぶ「ウェルカムりんごセラー」が迎え入れるビュッフェレストラン「青森りんごキッチン」は、食材はもちろん、青森の工芸「津軽びいどろ」で製作されたインテリアまで文字通り青森のりんご尽くし。ここでだけ飲める限定シードルもある。リチウムイオン蓄電システムを装備した専用車両。1200ルーメン以上のパワフルな光に、重耐塩、耐風速60m/秒など屋外照明としての耐久性も高水準。