#317 キミは生賴範義を知っているか 上野の森美術館 生賴範義展レポート

写真・文/島田雄右(モノ・マガジン編集部)

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生賴範義は、1962年より書籍の装画や挿絵、新聞広告の仕事を始め、SF映画史上最大のエポックメイキングな作品「スターウォーズ 帝国の逆襲」の国際版のポスター(1980年)を手がけたことでその名を知られるようになる。「ゴジラ」シリーズのポスターやコーエー(現コーエーテクモゲームス)の歴史シュミレーションゲーム「信長の野望」のジャケットといえばピンとくるという方も多いのではないだろうか。筆者は、父親の本棚の中から小松左京の『復活の日』の表紙を見て、その“オトナ”な世界にクラクラしたことを思い出す。生賴範義の描いた歴史、SF小説の表紙をみて思わず手に取り、ジャケ買いした諸兄も多いのではないか。

展覧会の入り口には、装画を手がけた書籍がタワー状に展示され、いきなり圧倒される。描いた書籍は生涯で1500冊以上! 多い時には年間130冊以上の装画を手がけていたというから、2日から3日に1枚描きあげていた計算になる。小説の中身を読まなければ描けないので、通読して表紙を描いていたというから驚きだ。

確かな写実力と、観るものを納得させる構成力。意外だったのは作品が厚塗りではないこと、必要最小限のタッチで的確に描きあげられた作品は、遠くで見てよし、また近くで見ても息を飲む。修正の跡がほぼ無いことも特筆すべき点だろう。構図さえ決まれば、あとは色を置いてゆくだけの作業というから、度肝を抜かれる。迷いや無駄のない線やタッチで描かれた作品はオーダーによってさまざまな技法で描かれ、映画、小説作品の世界観をイメージとして具現化した。生賴範義が手がけた多くのSF作品は現実ではなくフィクションの世界。漆黒の闇として描かれることが多い宇宙空間を、生命感あふれるグリーン系で表現した「生賴グリーン」と呼ばれる宇宙空間。発光する光や大海原をかき分けて進む船の水しぶきのエフェクト効果。後世に与えた影響は計り知れない。それが毎月のように出版、発売されていた80年、90年代は何と濃厚な時代だったことか。

残念ながら2015年に永眠した生賴範義。アシスタントもつけず、宮崎県のアトリエで黙々と創作に没頭し、数多くの作品を残した。イラストレーターという分野を切り開いたパイオニアでもあると同時に、その枠の中だけではくくれない繊細でいてダイナミックなアーティストでもある。

展覧会を企画した石田さん曰く「生涯作品3,000点以上、今回展示されているのは248点。この規模の展覧会なら、あと10回は開催できます」とは恐れ入りました。質と量の両立を完全に満たした生賴ワールドを体験していない者は上野に急げ! 会期は2月4日(日)まで。

■展覧会詳細情報コチラ
 上野の森美術館
 http://www.ueno-mori.org/exhibitions/article.cgi?id=227

※本ページ掲載の写真は、クリックすると拡大してご覧いただけます。

会場に到着。興奮を抑えられません。
会場に到着。興奮を抑えられません。


展覧会の入り口に登場する生賴タワー。圧巻!

展覧会図録は、糸かがり綴じという懲りよう。
展覧会図録は、糸かがり綴じという懲りよう。なるべく細部まで見て欲しいという展覧会を企画した方たちの情熱が伝わってくる。

グッズコーナーも充実しているので軍資金は余裕をもってお出かけ下さい。
ずっと欲しかった「ゴジラ対キングギドラ」のポスターを購入。グッズコーナーも充実しているので軍資金は余裕をもってお出かけ下さい。
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今回、案内して頂いた企画者の石田達也さんと。
今回、案内して頂いた企画者の石田達也さんと。生賴範義さんとは? の問いに「職人として芸術家として一流! まさに現代の北斎でした」