#308 このイスがオフィスに働き方改革をもたらすかも!?

文/小野正章(モノ・マガジン編集部)

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日本人が平日に座っている時間は平均420分。これは先進20カ国の中でももっとも長い時間であることが、調査結果で明らかになっている。昨今、日本は“座り過ぎ大国”と言われるが、まさに事実であることが立証されたのだ。では、長時間座っているとどうなるのか? それも別の調査結果によって、健康リスクが高まることが指摘され、海外ではすでに深刻な社会問題ともなっている。

だが、本当に悪いことは、ただ座っていることなのか。そうではなく、早稲田大学スポーツ科学学術院の岡 浩一郎教授は「本当に悪いのは座り過ぎて身体を動かさないこと」だと指摘する。たとえば、旅客機や映画館で長時間座っていると辛くなるのは当然のこと、同じ場所に長く立ち続けていても辛くなるように、人間のメカニズムは動くことを前提に設計されている。つまり、座っていようが立っていようが、長時間じっと動かないことが身体によくないということである。

じつはこの問題に長く取り組んできたのがオフィス用品メーカーのコクヨであった。かつて同社は立ち仕事を心地好く効率的に行うことのできる昇降デスク&テーブル「SEQUENCE」を発表したように、オフィスワークと健康の両立を追求してきた。その考えをさらに推し進めた結果、このたび完成したのが「ing」というイスだったのである。

“座るを開放する”というコンセプトのもとに開発された「ing」の特長は、座っていても動きを止めない仕組みにある。身体の微細な動きに合わせて360度自由に揺れる「グライディングメカ」の開発によって、前傾や後傾はもとより、左右や斜めに座面がスイング。座りながら身体を自由に動かせるのである。

実際に筆者も座ってみたが、確かに身体が自在に動くため、腰の負担が少なることが実感できた。後傾時には身体がリラックスし、前傾時はPC作業がはかどりそうな感覚。そして左右に動かせば、ちょっとしたストレッチをしている気分にも。たとえるなら安定したバランスボールに座っている感じだろうか…。少しの体重移動で前後左右にスイングするため、むしろ姿勢を安定させるストッパーを付けてほしいほど。(※付いてます)

実験によると「ing」に揺られながら4時間のデスクワークをこなすと、約1.5kmのウォーキング相当の運動量になることや有用なアイデアの発想数が13%アップするなど、身体や脳によい影響をもたらすという結果が出たという。

ちなみに「ing」は渋谷で開催される都市型サミット「DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA」のサテライト会場であるコインスペース(有料施設)に実験導入されるのを始め、渋谷ヒカリエ8階のコワーキングスペース「MOV」や㈱JINSのコワーキングスペースにも導入が決定したので、機会があればぜひ体感していただきたい。

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前後に動かす部分、左右に動かす部分の2層のメカニズム構造により、前傾後傾、作用のひねりまで、身体のどんな動きにも対応する。

揺れながらデスクワークを4時間すると消費カロリーはおにぎり約1/2個分相当。(40代男性5人の試験結果)

創造性テスト(AUT)における有用なアイデアの総数を比較すると発想数が13%アップ。


より身体を自由に動かせる「ラテラルタイプ」や背もたれに身体を預けながら動かせる「バーチカルタイプ」、ヘッドレスト付きの高級仕様などラインナップは豊富。素材はアルミ製と樹脂製、カラーも14種類が揃う。価格8万8000円~13万5000円