#290 あの、ヴァイオリンのような。

文/小久保直樹(モノ・マガジン編集部/新雑誌開発部)

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今まで一度たりとも、
そんな事を考えたことは無かったのに、
何かに操られるかのような勢いで、
家を買った。

港を見おろす
ヴィンテージマンションだ。

色々なタイミングが良く
森万恭さんにデザインを依頼することができた。

インターホンや、タイル、表札、などといった
これまで目を向けた事が無かった
いわゆるインフラ的なモノの選択が多くあり、
モノを見続けてきたはずの自分の知識がまるで通用しないことだらけであった。

肝心の内装は
森さんのご自宅と同じようなイメージでお願いした。

床、天井、窓枠などにウッドを多用し
壁は漆喰、ディテールには銅を採用した。

類似するもののない、
特長的な意匠からは
部屋というよりも、
なにかもっと別のイメージを受けるのだ。

名工・ストラディバリの作った、
それぞれに固有の名前を持つヴァイオリンのような印象が近い。

さて、
家という頭の中の趣味・嗜好を具現化した舞台が出来たなら
次は家具だろ、
と久々に物欲が眼を醒ました。

佐藤可士和さんのオフィスSAMURAIで座らせてもらって以来、
ずっとその感触が残っているポールケアホルムが憧れである。

ここ日本では
「クルマ、何に乗っているの?」なんて会話が時々聞こえてくるが、

殊、北欧では
「ソファ、何を使っているの?」なんて会話がよくされるのだそう。

それくらい、
ソファ(=家具)は、その人のアイデンティティを形成する
重要なファクターなのだ。

エリザベスチェアもいいな、
ベッドはウェグナーでしょ、

などと、
やはり買い物は、あれこれ考えている、
買うその直前が一番楽しいようだ。

弊誌読者の皆様には
鞄や靴、時計といった物ばかりでなく、
水栓や、シーリングファン、ドアノブ、ホームセキュリティなどといった対象にも
是非、常日頃から目を向けておかれることを推奨したい。

きっといつか
役に立つ日が来るのだから。

そして今回
一番身に染みて理解したことは

理想の家を「買うこと」よりも
理想の家を「見つける」ことの方が存分に難しい、という事だ。

予算は予算、目に見える物理的要素でしかない、

しかし、
物件となると、日々状況は変わり、どこかにもっとベターがあるのでは?
なんて思い始めたら最後、キリが無いから難しい。

いずれにしても
これまでの人生で一番刺激的な、そして
素晴らしき!経験をしたので
今回のお話しとさせていただきました。

それでは!

I never thought about buying a condo, but something, or someone- some kind of mastermind, took hold of me, and suddenly I bought a condo. A vintage condo lying in the hills of a port town. Due to good timing things just seemed to fall into place and Kazuyasu Mori was able to work on the interior design with me.

An intercom, tiles, a name plate etc. I never focused on these kinds of details before. But now I had many decisions to make about things I didn’t know about.

I requested Mr. Mori to design something similar to his own home.

The floor, ceiling and window frames are wooden. The walls are a smooth white plaster, and the details are copper. The apartment is Mr. Mori’s particular style. It doesn’t feel like a room. To me, it feels like how a violin must feel to a luthier like Stradivari. Each violin has it’s own name. The house is inside the mind.

Next is furniture.

I have never forgotten the feeling when I first sat down on a PK sofa at Kashiwa Sato’s office. It is my dream sofa. Here in Japan, I often hear people ask “What car do you drive”? But in Northern Europe they ask, “What’s your sofa”? Furniture is important for a person’s identity. “I like Elizabeth’s chair”, “A Hans Wegner bed is the best”. These conversations held before shopping, are in my opinion the most fun. For readers, not only bags, shoes and watches are important, but watering cans, ceiling fans, door knobs and security systems are important too. So you have to check them all the time. One day it will be useful.

Finding a house is more difficult than buying a house. A budget is a budget. It doesn’t change. But property listings change every day, and they never end.

Buying a condo has been the most drastic and spicy experience I have had, and I wanted to let you know.

Bye! – Naoki kokubo