#278 誰も知らないマッサマンカレーは、名翻訳で。

文/本田賢一朗(モノ・マガジン編集部)

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開発担当の方が目をカレー皿のようにして、国内外を回っている。無印良品のレトルトはさながらカレー曼荼羅。写真提供/無印良品


現在発売されている無印良品特集。そのレトルトカレーに関して、カレー業界から見てどのようなポジションにいるのかを知りたくて、カレー総合研究所の井上岳久さんにお話を伺った。

井上さんに取材をお願いするのは今回で2回目だがカレーを通してのお話しは、モノ・コトへの視界を良好にしてくれる。

無印良品が本場の味に近づけようとする努力を怠らないことに関して話をふった際の、マッサマンカレーを例にしたお話。

パームシュガーを使った「マッサマンカレー」は、かの本国タイでは、とても甘くて、井上さん曰く「日本人からすると、とても食べられたものじゃない」という。ファミレスはじめ、ホテルなどのカレーブッフェなど日本に登場して久しいマッサマンカレーだが、もちろん食べられないような甘いカレーではない。つまり「結局、日本では本物のマッサマンカレーがどんな味か、どんなカレーなのか誰も知らないまま食べている」(井上さん)状況だというのだ。

ただし、これは何も悪いことではないとも。

カレーは、インドではスパイスを味わう料理であり、日本は米を味わうための料理であるのでアプローチがそもそも違う。インドへのカレー留学なども手がけるなどカレーのスペシャリストを育成する立場でもある井上さんをしても日本人が「だし」のようにスパイスを味覚できるようになるのは、正直想像がつかないのだという。それらを考え合わせても「本場、本物の味そのものを追求することが、正しいというわけでもない」(井上さん)

文化交流には意訳が必要なのだな、と記事で無印良品のレトルトカレーに「名翻訳」という言葉を使ったのは、こんなお話を聞いたからでもあります。

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井上さんによるとレトルトカレーをち寄るカレーパーティも流行っているとか。この「マッサマン」や「ジンジャーパネン」といった、タイカレーの甘酸っぱ辛ウマさはパーティのアクセントにうってつけ。価格350円