#254 カシオの高級時計と山形カシオ

文/小野正章(モノ・マガジン編集部)

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G-SHOCKやBABY-Gなどのイメージから、“タフ”とか“コストパフォーマンス”で語られがちだったカシオの腕時計。しかし、2004年にフルメタル・ケースの「オシアナス」が登場したあたりから、徐々に高級化路線へとシフトし始めている。その傾向が本格化しだしたのが、山形カシオにプレミアムプロダクションライン(以下、PPL)が誕生した2012年頃からだ。

PPLとは、カシオ製品のブランディング戦略を製造現場から支えるため、山形カシオ内に設けられた高級品生産工程のこと。ここに山形カシオの誇る超精密技術やセンシング技術、画像処理技術といった独自の先端技術を導入し、カシオの高級腕時計を独占的に製造しているのだ。

ちなみに、このような高級品製造の特別ラインというのは、国内の時計メーカーではすでに当たり前になっている。たとえばセイコーでは、クレドールやグランドセイコーを製造するために雫石高級時計工房(盛岡セイコー内)や信州 時の匠工房(セイコーエプソン内)を設けているし、シチズンでは「ザ・シチズン」や「カンパノラ」を組み立てる南信州高級時計工房(シチズン時計マニファクチャリング殿岡工場内)を稼働させている。

また当然のことながら、これらのセクションで働く技術者も経験豊かであり、かつ高度な技術を身に着けている。経産省認定の“現代の名工”や黄綬褒章を受賞した技術者も決して珍しくない。歴史の新しいPPLでは、そうした“勲章”をもつ技術者はまだいないが、独自の認定制度を設けることにより、各々のモチベーションと技術力の向上を図っている。

では認定制度について説明しよう。まず、1年以上の実務経験をもつ一般ラインの技術認定者を対象に実技検定や筆記試験が行われる。これに合格するとゴールドメダリストとしてPPL入りが認められるのだ。そこで3年以上の経験を積み、プラチナ認定に合格すればプラチナメダリストとなり、さらに3年以上の経験+マイスター認定の合格で、最高位であるマイスターに認定される。ちなみに制度誕生以来、マイスターは空位だったものの、この5月に初めてふたりの女性が合格したという。

ところで、クオーツウオッチの組み立てに各々の技量は関係するのか? という疑問をもつ方がいるかも知れない。その答えはYESである。クオーツとは言っても、モジュールは微細な歯車で構成されている。その噛み合わせの調整や金型の研磨、最終検査などでは、人の目や手が絶対に欠かせない。いくら先端を行く優秀な機械でも、人の感性無くして、その威力を最大限に発揮させることは不可能なのである。

※本ページ掲載の写真は、クリックすると拡大してご覧いただけます。

img0032012年に発足した山形カシオの技術者認定制度。現在、マイスターは2名、プラチナメダリストが4名、ゴールドが10名。黒、白、金の腕バッチがそれぞれの証だ。

独自の画像処理技術によって針の調整が行われる。一般の時計の取り付け精度は、±0.5°以内に対して、PPLの高級モデルでは±0.3°以内に収めなくてはならない。

山形カシオではオリジナル製品も製造している。これは骨伝導によって水中での会話が楽しめるダイブトランシーバー「ロゴシーズ」

左はクオーツモジュールの歯車。シャープペンとの比較により、その小ささはお分かりの通り。右はモジュールの組み上げ。こうした作業は技術者の眼と手が頼りだ。

img002エディフィスの新作「EQB-66」に搭載される3Dグローブダイアルも山形カシオの超精密技術で作り出される。