[#170] お帰り! ジャンボ

特記以外の写真・文/上岡篤(モノ・マガジン編集部)

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写真/航空ファン編集部

皆さんは「ジャンボ」と聞いて、何を連想しますか? 弊社のカメラマンに尋ねたところ“尾崎”と来ましたが、多くの人はジャンボジェットと答えるのではないでしょうか。

そんなジャンボジェット、ボーイング747が今年の3月いっぱいで日本の空から消えることになります。

いま日本国内の旅客航空会社でボーイング747を就航させているのはANA(全日本空輸)のみ。一時期は39機を数えたANAのジャンボですが、どんどん退役が進み、いま残っているのは2機だけになってしまいました。退役を目前に控えた昨年10月から、かつてジャンボが就航していた路線を再び飛ぶ「お帰りフライト」が各地で行われていたので、ニュースなどでご覧になった方も多いことでしょう。

ですが、かつて就航していたのに「お帰りフライト」に入っていなかった路線があります。それが、大阪・伊丹空港です。日本の大動脈でもある羽田~伊丹線にはかつてANA、JALとも多くのジャンボが飛んでいました。ですが、市街地にある伊丹空港周辺地域の騒音規制が強まり、2006年4月以降はエンジンが3基以上ある飛行機の商業飛行が禁止となってしまいました。その象徴でもある4基のエンジン――ジャンボの姿は伊丹空港では見られなくなってしまったのです。

伊丹では再び見られないままジャンボは消えてしまうのか……。その嘆きを見事に裏切ってくれました。先の日曜日、1月12日に「おかえり!JUMBO 伊丹ラストフライト」が催されたのです。このイベントは、ANA大阪空港の職員の、長年ジャンボがお世話になって来た地域の皆様に感謝の思いを伝えたいという熱意のもと実現したもの。飛行禁止になっているジャンボを飛ばすために、周辺自治体、周辺団体、空港運営会社の理解を得て特別に飛来可能になったというから、相当な苦労があったはずです。多くの航空ファン、そして関西の人たちが待ち望んでいた伊丹へのフライト。その幕開けは、7時21分に羽田からフェリー飛行(旅客を乗せない飛行)で着陸した瞬間から始まりました。

私も大阪へ行った際は伊丹空港に降り立つことが多いのですが、ひと目ジャンボを見ようと押し寄せた人の多さに驚き! こんなに賑わっている伊丹空港を見るのは初めてです。

午前中には周辺自治体の自治体住民を招待しての機体見学会、そして午後には同じく抽選で当選した周辺自治体住民を乗せての遊覧飛行が行われました(→前のペースで書いているととても長くなってしまうので巻きにします)。機体見学会では「うわっ、カッコいい!」「おっきいい!」という声、遊覧飛行では離陸、機内アナウンス、そして着陸と、ことあるごとに沸き起こった乗客からの拍手が、ジャンボジェットの人気ぶりを物語っているようです。8年ぶりの、そして最後となる伊丹空港へのフライトを楽しみ、そして惜しんでいるのでしょう。

すべてのイベントを終え、18時45分、最後となる伊丹空港からの離陸へ向かうジャンボが動き出しました。すっかり闇に包まれているにも関わらず、展望デッキには数多くの人が待っています。そして19時過ぎ、その独特なエンジン音を響かせながら、ジャンボは羽田空港へ向けて飛び立っていきました。多くの人がジ~ンとしたでしょうが、私もそのひとりでした。さようなら、ジャンボ!

ジャンボの離陸を見送るANA大阪空港職員のもとには、ひとつの横断幕が掲げられていました。「THANKS JUMBO ありがとう、さようなら、ANAボーイング747」。見送った後には、ターミナルで見送っていた人々に対して「ありがとうございました!」と最敬礼。すると、ターミナルに居た人々から、拍手が沸き起こっているではありませんか! ありがとう! ありがとう! 多くのファンから次々と出る感謝の言葉。最後にやって来てくれたジャンボにはもちろんですが、この企画を実現してくれた職員の皆さんにも贈られる感謝の言葉。いや~、本当に良いイベントでした。

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久しぶりに伊丹空港に降り立ったボーイング747“ジャンボジェット”。この日は現在残っている747-400Dのうち、登録番号JA8961が使用されました。この後、地元住民を対象にした機体見学会が行われました。余談ですが、私はこの角度のジャンボがもっとも好きです。

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遊覧飛行のキャプテンを務めた井上勝喜機長(左)は地元川西市出身、副操縦士担当の山本烈士(あつし)機長(右)は神戸出身。真ん中はこのおかえりフライトの発案者、ANA大阪空港 オペレーションサービス部の脇茜さん。「実際にジャンボを見ると、すごく大きな機体に改めて驚きです」

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伊丹空港を出発し、富士山を見ながら横浜~東京付近を飛んで伊丹空港へ再び着陸するのが今回の遊覧飛行のコース。機内を担当したキャビンアテンダントの半数は、伊丹空港にジャンボが就航した1990年当時に着用していた8代目の制服(~2005年まで)を着用していました。

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写真/航空ファン編集部
遊覧飛行を終え、10番スポットに進入するボーイング747。伊丹空港初となる、消防車による放水
アーチで出迎えられました。

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最後のジャンボジェット離陸後、ターミナルに向かって手を振るANA大阪空港の関係者。皆さんの熱意で、ジャンボが再び伊丹空港に戻ってくることが出来ました。ありがとうございました!

※ANAでは3月31日(月)の羽田-那覇線の運行がラストフライトとなることを発表している。その前日、3月30日(日)には羽田-札幌(千歳)線、羽田-福岡線でそれぞれ一往復する予定。また、3月にはチャーターフライトの実施も予定されている。詳細はhttps://www.ana.co.jp/thanks_jumbo/ まで。