[#70]口を酸っぱくして!? 訴える本物のキムチ

文・本田賢一朗/モノ・マガジン編集部

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mainからし菜など初めて体験するキムチの数々は目新しさと舌鼓で、五感が跳ね上がる。手前左の皿は酒かすで漬けた大根。味はまさに奈良漬。日本統治下時代に日本酒の清酒工場があったなごりで、韓国でも昔から酒粕の漬物は食べられていたのだとか。アンさんも訪日した時に奈良漬を食べて「なんで日本にあるの?」と不思議に思ったそうだ。


初めてキムチを食べたのは小学生の頃だったろうから、25年以上前か……。ターミネーターが分解するように毛穴がぱっくり開く体感以来、キムチとは唐辛子のけんか投球だと刷りこまれていたのだ……。

先日、取材で訪れた韓国・全州。ビビンパプやマッコリ発祥の地であり、全州の韓定食は韓国人のステイタスとも言われるほど食の都として知られる。

若者向けのカフェ・スタイルのビビンパから、伝統の韓定食など「もう食べられないよぉ」と本当に寝言で言ってしまいそうなほど供される量。その菜のメインはやはりキムジャンなわけだが、どれもこちらにつっかかってくるような辛さのキムチはどこにもなく、もちろん辛いは辛いけど、豊かな酸味のあとにちょいと差し出されるような辛味は、韓国でなければ知ることのない味だ。

唐辛子、塩辛、にんにくを主に15~20種ほどの材料に、活きた乳酸菌でこそ醸しだされる深い酸味がキムチがキムチたる所以だと、この本場で食育された。キムチは乳酸菌、その酸味が本丸。

その本場でキムチ名人と呼ばれる安明子(アン ミョンチャ)さんのお店にお邪魔した。食の都・全州から正統なキムジャン(キムチの漬け込み)文化を発信しようと大活躍中のお方。「全州は自然災害もなく、(歴史的にも)内乱も起らなかった恵まれた土地。キムチの材料となる野菜が良いものが育つ環境」だから、全州のキムチは最高だと言う。原材料は徹底的に目利きし、どれも生野菜でキムチを漬け込んでいる。こんなことをやっているのは韓国といえど皆無なのだとか。

お母さんの手仕事だけではダメと、食材はよくよく吟味し、唐辛子の種もきれい取り除くなど丁寧な下ごしらえ。気温と寝かせる時間調節による乳酸菌のコントロールはじめ科学的分析も採り入れたアンさんのキムチは、短期間ながら韓国で食べたどのキムチとも、次元が違いました。いやーうまい! 正直、今までのキムチはうそだったんだぜ~、と口ずさんでしまいますよ。

店を出てホテルへの帰りに最近韓屋村で増えつつあるモダンなカフェで食後のカプチーノなんぞを。良い物食べた後は、食後のお茶で台無しにされたくないのが人情。失礼致しますが、キムチでそんな風に思ったことはなかったなぁ。

img001店に訪れたのは帰国前日の晩。連日の膨満200%腹で最後の晩餐はNo Thanks! な気分でしたが、結局2人で白と赤のクッパと、にら、エゴマ、サンチュなど野菜たっぷりの(ご飯よりも多いんじゃ?)ビビンパプを注文。このビビンパプはもう一杯いけたなぁ。それくらい美味いんだよっ! ほとほと考えてみれば韓国の食べ物は野菜ばかりで、節制されている方も安心してたらふく食べられる。白いほうのクッパは唐辛子を入れていないキムチを使ったものでアンさんが開発した韓国でも唯一独自のメニューだとか。このほかキムチ、カクテキ他の小皿おかわり込み10皿程度、トータルおよそ1400円(19,000ウォン)。

img002「文化としてのキムチを広めたい」というアン ミョンチャさん。日本語も達者。親日的で日韓の文化交流をもっとできればとワークショップも積極的に行い、毎年埼玉県・高麗神社でアンさんを招いて開催される「日・韓キムジャン祭り」はもう4回目。なんにせよ、美味しいキムチを求めるなら、この人の名前は覚えておくべし。「焼きそばの付け合せにキムチを食べると美味しい」というありがたいヒントもくれたので、ぜひ試したい。

img003日・韓キムジャン祭り
11月27日(日)
高麗神社高麗家住宅広場
埼玉県日高市大字新堀833番地
高麗神社 ℡049-296-4311
参加費5000円(持ち帰りキムチ2kg、カクテキ1kg程度)
先着150人(定員になり次第締め切り)